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癌におけるDNAメチル化をめぐる最近1年間の話題
DNAメチル化をめぐるここ数年の知見の集積はめざましく,分化・再生医療の分野と並んで癌領域においても,癌発生の重要な機構の一つとして注目されている.1993年にRB遺伝子の不活化の機構として,プロモーター領域のCpGアイランドのメチル化が報告されて以来1),多くの癌抑制遺伝子の不活化にプロモーター領域のメチル化が関与していることが知られるようになった.これまでに様々な方法により,癌細胞において異常メチル化した遺伝子が同定され,同時にいくつかの新しい癌抑制遺伝子も発見されている.また最近では,DNAメチル化を触媒する酵素であるDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT),特にDNMT3bの癌化への直接の関与を示唆する報告も散見される2,3).これらの報告は,後述するわれわれの結果とあわせ,今後肺癌を含む難治性の癌の治療において,DNMT3bやその他のDNMTに対する阻害剤が有効な分子標的治療薬となりうる可能性を示唆するものである.さらにメチル化に関連した遺伝子の発現抑制には,クロマチン構造の変化が大きく関与していることが知られており,ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)などのクロマチン構造に変化を及ぼす因子の同定,およびこれらの因子とDNAメチルトランスフェラーゼとの相互作用についても,精力的に検索がなされている最中である4).
一方で,癌化した細胞においてはゲノム全体としては正常細胞と比べて低メチル化状態となっていることが知られており,ゲノム不安定性に関与していると考えられている.最近,大腸癌においてDNMT3bの5つあるspliced formのなかで,DNAメチルトランスフェラーゼ活性を持たないとされるDNMT3b4が過剰発現しており,このためにDNMT3b4がdominant negativeとして働き,正常なDNMT3bのメチル化機能が阻害され,傍セントロメア領域が低メチル化状態となり,癌化に関与している可能性があることが報告された5).
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