Topics Respiration & Circulation
虚血心におけるACE阻害薬の作用
北風 政史
1
1大阪大学医学部第一内科
pp.441-442
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901243
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■最近の動向 ACE阻害薬は多くの大規模試験の結果より虚血性心不全の予後を改善することが明らかである.このACE阻害薬は,アンジオテンシンII生成を抑制するが,ヒトの心臓では,ACEによるアンジオテンシンII産生は20%以下で,残りの80%はセリン酵素の一種であるヒトキナーゼによることが示されている.このため,ACE阻害薬より特異的にアンジオテンシンIIの効果を抑制するアンジオテンシンII拮抗薬がより効果的ではないかと注目を集めつつある.しかし,アンジオテンシンII拮抗薬の作用が降圧という面からはACE阻害薬と同程度の効果が得られるが,心不全改善という面からはACE阻害薬と必ずしも同等ではないとの報告もあり,ACE阻害薬の薬理・生理作用は,アンジオテンシンII産生抑制だけでは説明がつかないようである.興味あることに,ACE阻害薬は,アンジオテンシンII産生抑制と同時にキニナーゼII活性を低下させブラジキニン分解を抑制することが知られている.虚血により遊出されるブラジキニンはNO合成酵素を活性化しNO産生を促進するため,ACE阻害薬の効果は,ブラジキニン・NO連関を介する可能性が考えられる.実際,ACE阻害薬がNO依存性冠血流量増加作用を有し,心筋虚血を改善することが報告されている.
ACE阻害薬は現在臨床的には降圧薬や心不全治療薬として用いられているが,虚血性心疾患においてACE阻害薬によりNO産生が増加し虚血が改善するなら,ACE阻害薬とNOの連関を解明することは今後の虚血性心疾患の病態解明・治療法開発に関する基礎および臨床研究の重要な課題となろう.
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