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消化管各所(食道〜肛門管)にはさまざまなタイプの非腫瘍性ポリープが発生する.一つの臓器に限局して発生するもの(食道fibrovascular polyp,十二指腸Brunner腺過形成など)もあれば,複数の臓器にまたがって発生するもの〔IFP(inflammatory fibroid polyp),PJP(Peutz-Jeghers型ポリープ)など〕もある.ここ数年,本誌では臓器ごとに,“知っておきたい○○○病変(疾患)”あるいは“まれな○○○病変(疾患)”というテーマでかなりの特集号を組んできたが,そのほとんどは腫瘍性疾患を主体として取り上げており,今回のテーマに属する疾患はほとんど掲載されていない.本誌で非腫瘍性ポリープをテーマとした特集は,近年では2012年の「胃ポリープの意義と鑑別」(47巻8号),2013年の「非腫瘍性大腸ポリープのすべて」(48巻8号)であり,腫瘍性疾患(腺腫に代表される良性病変や腺癌などの悪性病変)に比べると,生検で腫瘍性が否定されれば経過観察可能な病変も少なくないため,臨床医には無症候性な病変は軽視されているものも多いと実感している.このため,本号ではこれまでほとんど取り上げられることのなかった食道や十二指腸のまれな疾患も含めて,上部消化管の非腫瘍性ポリープについて,執筆者におのおのの疾患における内視鏡所見(特徴)とそれに対応する病理組織像(非腫瘍性と判断する組織学的根拠も含む)を提示・解説していただき,読者に腫瘍性ポリープとの鑑別診断に有用な内視鏡所見の理解を深めてもらうことを目指した.
まず食道では,新井論文に示されているように,隆起(ポリープ)を呈する非腫瘍性疾患そのものが少なく,かつ,病理学的にもfibrovascular polypなど極めてまれな病変もあり,その好発部位や特徴的内視鏡形態を脳裏に刻めば,類似の形態・病理組織像を呈する腫瘍性ポリープも少ないため鑑別が容易となる.新井論文で示されたものは貴重な症例と言える.また,胃食道逆流症に伴い食道胃接合部領域に発生する非腫瘍性(炎症性)ポリープでは,生検病理組織では少なからず反応性の核異型がみられ非上皮性腫瘍,悪性腫瘍などとの鑑別が困難なことも少なくない.PG(pyogenic granuloma)のように(主題症例 ; 竹内論文),NBI拡大観察所見における腫瘍との鑑別に有用となる指標の集積が必要であろう.
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