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近年,次世代シークエンサーの登場によりゲノム解析(GWAS)が飛躍的に進歩し,これまで分類不能な炎症性腸疾患とされてきたものの中に,単一遺伝子異常により発症する消化管病変が少なからず存在することが明らかとなってきた.その代表として,これまで原因不明の難病とされていた“非特異性多発性小腸潰瘍症”が,遺伝子解析によりSLCO2A1遺伝子異常により発症することが解明され,その詳細が一昨年の本誌(52巻11号)にて特集されたことは記憶に新しい.一方,本邦の本庶佑先生が昨年ノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫チェックポイント阻害因子の発見とがん治療への応用により予後不良な悪性腫瘍の治療に光明が差した反面,消化管を含めた諸臓器にさまざまな免疫関連有害事象を発症することが問題となっている.このような時代的背景を鑑み,今回の特集号では近年注目されている遺伝子・免疫異常に伴う消化管病変について,先進医療を取り入れた診療を担っている専門医の先生方から「胃と腸」誌にふさわしい美麗な内視鏡画像を中心とした形態学的特徴と臨床像について最新の知見を集約していただいた.
まず,冒頭の遺伝子異常に関する主題論文(竹内論文)では,一般の消化器内科医では遭遇することもまれな,小児で発症するmonogenic IBD(このような疾患群が存在することを知らない読者も少なからずいるであろう)について,代表的な疾患ごとに症例を提示いただき,その臨床像と内視鏡画像の特徴について解説いただいた.小児の診療では非典型的な画像を示す炎症性腸疾患に遭遇した場合,安易に分類不能型として治療するのではなく,主題症例(石原論文)のように原因遺伝子が特定できれば造血幹細胞移植にて寛解導入可能な症例もあるため,本症の存在も念頭に置き遺伝子解析まで考慮すべきであろう(筆者も保険診療でSLCO2A1遺伝子も含めたパネル解析ができることを初めて知った).次に,腸管Behçet病に合併した骨髄異型性症候群/染色体異常(trisomy 8)については(本澤論文),合併の有無による形態学的特徴に差はないものの,主題症例(冬野論文)を含め抗TNFα抗体製剤が有効な症例があり,早期に染色体解析を行い治療介入する必要があろう.
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