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近年のカプセル内視鏡(capsule endoscopy ; CE)をはじめとした新たな小腸・大腸画像診断技術の進歩はめざましいが,一般的な画像診断であるX線造影検査や大腸内視鏡検査と異なり,高額な機器や設備が必要な検査もあり,すべてのモダリティを備えている施設は極めて少ないのが現状であろう.その一方,これらの先進画像診断では適応疾患が限定されているため,保険診療であってもCEやPET(positron emission tomography)-CTでは患者負担も高額となる.それゆえこれらのモダリティを使いこなすには,その適応疾患や診断における利点や欠点(問題点)などを熟知しておくことが必要であるが,はたして読者諸氏はすべてのモダリティに精通されているであろうか.このような背景も含め,本号では先進画像診断のエキスパートに自験例の成績も交えながら各モダリティの現状(診断特性や適応疾患,利点,欠点,限界など)と問題点克服に向けた取り組み(将来展望)を解説いただくとともに,将来臨床応用が期待される次世代画像診断についても紹介した.
まず,主題論文の前半で,本邦では2007年から保険収載されたCEを取り上げた.CEは非侵襲的かつ簡便な検査法であり,最も早くから実用化された小腸CEの画質や解析ソフトの向上はめざましい.パテンシーカプセルの登場により,すべての小腸疾患が保険適用となったことやバルーン小腸内視鏡が検査に時間を要し侵襲的であることから,今や小腸疾患が疑われる際には第一選択といっても過言ではない.ただし,国産メーカーではいまだ保険適用疾患が限定されていること,通過速度の速い十二指腸・上部空腸病変や粘膜異常のない憩室・粘膜下腫瘍の見落としなどがピットフォールとして指摘されている.一方,一昨年より保険収載された大腸CEは,高コスト,前処置,適応,読影などの課題が多く,低コスト・短時間で挿入観察可能な従来の大腸内視鏡検査を超えるスクリーニング検査となるには程遠いのが現状であり,今後も超えるべきハードルは高い.なお,欧州では既に食道CEが実用化されており,本邦でも日本人に多い胃癌診断のスクリーニングとして管腔の広い胃内での磁気誘導操作による胃CEの開発も進められている.また,別項のトピックスで取り上げたが,一度の検査ですべての消化管を観察する長時間撮影可能なリチウムイオンバッテリー搭載の全消化管CEの開発も進められている.
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