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ここ数年,本誌において臓器別に特集してきた知っておきたいまれなものシリーズの大腸バージョンである.本誌の愛読者であれば,昨年,大腸悪性腫瘍のまれなもの(51巻3号)が組まれたことから,早晩,本号(大腸良性疾患)が出ることは予想されていたであろう.以前に特集した食道と胃のシリーズでは良性・悪性疾患は分けずに特集号が組まれていたが,なぜ大腸は良性と悪性の2本に分けて特集されたのであろうか.それは,主題の3論文(小林,清水,八尾論文)にも列記されているように,大腸では良性疾患(特に非腫瘍性疾患)が多種多様でまれなものも少なくないことに加え,まれながらも知っておいてほしい疾患が多く存在するからである.
主題論文ではこれらの大腸良性疾患を良性腫瘍・腫瘍様病変の画像診断(小林論文),非腫瘍性疾患の画像診断(清水論文)および良性疾患の病理診断(八尾論文)の立場から解説いただいたが,本号も含め,これまでの食道,胃のまれなものシリーズの主題でも問われているように,何をもって“まれ”とする(定義する)のか,一般的には臨床上遭遇する頻度が低いということであろうが,その頻度を正確に求めることは極めて困難であり,まれの定義は各著者の判断に委ねられている.また,大腸の良性疾患の中には,若年性ポリープに代表される過誤腫のような腫瘍様病変のほかにも,腸管子宮内膜症やinflammatory myofibroblastic tumorなどの腫瘍・非腫瘍(炎症性疾患など)のいずれに分類されるのか判然としない疾患もある.本質的には良性の腫瘍(様)疾患ではあるが,腺腫に代表されるように,多くの疾患はまれに悪性化するポテンシャルも有している.小林論文ではまれな良性の腫瘍(様)疾患について,主観的(経験的)な頻度に加え,比較的ありふれた疾患でも非典型的な形態や非好発部位に生じた病変は知っておきたいまれな疾患と捉え,その画像診断を鑑別すべき疾患との比較も含め解説している.清水論文では著者の豊富な知識と経験から多種多様な非腫瘍性疾患を網羅的に分類(Table 1の分類表のまれな疾患一覧のみでも十分一見の価値あり)し,総論的に簡潔に解説いただくとともに,まれな疾患でありながら特徴的な画像を呈する病変については臨床病理学的所見も含め提示している.病理の八尾論文では,著者の経験からまれと思われる疾患(年間数例程度遭遇する疾患)のうち,生検診断が有用なもの(確定診断または疑診の所見が得られるもの)についてピックアップし,解説されている.
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