Japanese
English
今月の主題 一度見たら忘れられない症例
主題
消化管GVHD
Gastrointestinal Graft-Versus-Host Disease
小村 成臣
1
,
小山 恵司
1
,
尾﨑 隼人
1
,
前田 晃平
1
,
大森 崇史
1
,
堀口 徳之
1
,
城代 康貴
1
,
鎌野 俊彰
1
,
大久保 正明
1
,
舩坂 好平
1
,
長坂 光夫
1
,
中川 義仁
1
,
柴田 知行
1
,
大宮 直木
1
Naruomi Komura
1
1藤田医科大学医学部消化器内科学I
キーワード:
GVHD
,
移植片対宿主病
,
orange peel
Keyword:
GVHD
,
移植片対宿主病
,
orange peel
pp.1171-1174
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403202120
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臨床経過
患者は30歳代,女性.
10歳時に1型糖尿病を発症し,インスリンで加療するも慢性腎不全となり透析が導入され,30歳時に脳死膵腎同時移植が施行された.その後ステロイド,タクロリムス,ミコフェノール酸モフェチルなど内服.移植2年後に下痢が6週間持続するため当科に紹介され受診となった.大腸内視鏡検査にて,回腸末端にアフタの散在を認め(Fig.1a),盲腸には輪状傾向の幅の狭い潰瘍や瘢痕(Fig.1b),散在性に不整形びらん(Fig.1c,d)を認めた.盲腸からS状結腸にかけては血管透見消失像(Fig.1e〜g),orange peel appearanceが観察された.
生検病理組織学的所見は,盲腸から上行結腸では好酸球やリンパ球,形質細胞を主体とした高度の炎症細胞浸潤と陰窩の減少,萎縮がみられた(Fig.2a).残存する陰窩には再生性の増生がみられ(Ki-67陽性細胞増加),アポトーシスが散見された(Fig.2b).横行結腸から下行結腸では腺底部にポップコーン状のアポトーシス(γ-H2AX免疫染色陽性)がみられ,同様の高度炎症と陰窩の萎縮を認めた.Ziehl-Neelsen染色は陰性,DFS(direct fast scarlet)染色陰性,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus ; CMV)感染陽性像はなく,病理組織学的に移植片対宿主病(graft-versus-host disease ; GVHD)に矛盾しない所見であった.以上より消化管GVHDと診断し,膵酵素製剤の補充療法を行ったところ,下痢は改善し退院となった.
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