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編集後記
九嶋 亮治
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1滋賀医科大学臨床検査医学講座(附属病院病理診断科)
pp.1647
発行日 2016年11月25日
Published Date 2016/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403200780
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「十二指腸における胃型細胞の出現様式」1)に興味を持ち続け,本号を企画した一人として,編集後記に絡め十二指腸上皮の細胞分化と腫瘍について短く熱く語ってみたい.十二指腸は胃という大国の影に隠れ,いくつか教科書を繙いてみても十二指腸病変が多くのページを割いて記載されることは少なく,取扱い規約やガイドラインもない.解剖学の教科書には小腸は十二指腸,空腸,回腸から構成されると記載されているが,「胃と小腸をつなぐ消化管である.(中略.)なお小腸の一部とする考え方もある」との記述もみられる(Wikipediaより.筆者が投稿したわけではない).
発生学の教科書では,Vater乳頭までが前腸由来となっているが,このあたりまでBrunner腺が粘膜固有層深部から粘膜下層に存在する.Brunner腺は胃の粘液腺と酷似しており,それに関連する病変の病理組織学的所見も併せて胃の一部と見なしたほうが理解しやすいこともある.すなわち,球部と下行脚のVater乳頭あたりまでは“小腸の皮を被った胃”で小腸壁内に胃がBrunner腺を舌状に伸ばし自国の領海と主張しているのである1).粘膜を剝がすと多量のBrunner腺が剝き出しになる.この構築が十二指腸に発生する腫瘍の診断と治療を困難なものとしているのかもしれないが,蔵原による序説がこの点を踏まえて十二指腸上皮性腫瘍の診断と治療の問題点を実に見事に総括しており,まずはこの4ページをじっくり読んでから各論に進んでほしい.
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