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はじめに
早期胃癌の診断についての諸論文,著書も,いちおう出つくした感がある.現在では,診断上特殊にみえたもの,切除標本の肉眼所見や組織所見からみてまれな種類のもの,それに,いまは微細なもの,などがちくいち取り上げられ,症例のつみ重ねが行なわれている現状である.鑑別診断というのは,診断を論ずるとき,欠かせない事項である.ところが,鑑別診断を論ずる場合,診断法,診断能からみて,それは妥当であるという諸学者の保証がいる.でないと独りよがりになってしまう.また,癌でなかったものを手術したのだから,何度も反省を重ねて,これは許されることであるか,どうかという問題もかかえていることになる.こんなことから,鑑別診断という独立した表題で取扱われるのが遅れたわけである.
鑑別に困った症例を並べてみたところで,個人や小人数のグループの行なった範囲の仕事では,妥当性を欠き,また,有益な例がもれることにもなる.有益な症例は,今までに私のみせていただいた範囲のものでも,全国に沢山ある.そこで,われわれは,ここに鑑別診断の綜説をかくという気持ちではなくて,現時点での鑑別上問題になっている点をとり上げ,いろいろな意見を参考にし,自分らの症例をおみせして,これで足りないところを,今後,皆さんに,どしどし症例を追加していただこう,そして,より適確な診断の道を歩もうというわけである.
内容の大筋を次のようにした.
1.既発表のわれわれの論文のなかで,鑑別診断にかんするところをまとめ,それにその後の成績をつけ加える.鑑別診断にかんしては,胃隆起性病変で山田ほか,ポリープでは田中ほか,古沢ほか,粘膜下腫瘍では古沢ほかの立派な論文がある.敬意を表する次第である.
2.われわれの意図を了解して下さり,情報を提供して下さった方々の成績をも合せて,合同鑑別診断成績図表を作ってみる.鑑別診断の話を,より普遍化できることになろう.合同成績の基礎データーは後に掲げる.
3.われわれの症例について,X線診断と内視鏡診断との対比を,いちおう行なってみる.X線診断と内視鏡診断は,みんな併用してやっているから.
4.X線診断で鑑別に困った症例のX線像を,あとに掲げる.これも,ATLAS OF X-RAY DIAGNOSIS OF EARLY GASTRIC CANCER1966に掲げたものを除き,他の症例に限る.
微細病変についての鑑別診断は,今回は省略する.
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