消化管組織病理入門講座・8
【大腸】潰瘍性大腸炎と癌―典型的な組織像(活動期,寛解期,dysplasiaと癌)
西上 隆之
1
,
沖村 明
1
,
西井 真
2
,
樋田 信幸
3
,
三富 弘之
4
,
藤盛 孝博
4
1製鉄記念広畑病院病理科
2兵庫医科大学ささやま医療センター総合診療・家庭医療科
3兵庫医科大学内科学下部消化管科
4獨協医科大学病理学(人体分子)
pp.248-254
発行日 2014年2月25日
Published Date 2014/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403114079
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はじめに 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)*1患者数は,2011年には13万人に達している1).毎年約5,000人の増加がみられる疾患である.従来は専門病院に集中していたUC患者が増加するにつれ,炎症性腸疾患の専門外の医師でも診療する機会が増えてきた.また,病理医も同様に,炎症性腸疾患に精通していなくても診断する機会が増加している.したがって,UCについて臨床医は病理組織像に,病理医は臨床像および内視鏡像に精通し,正確な診断をすることが大切である.
UCの診断にはまず,持続性または反復性にみられる粘血・血便の臨床症状が大切である.また,内視鏡および注腸X線検査においては,直腸下部から連続性・びまん性の障害が重要な所見である.さらに,生検組織学的所見としては,活動期では粘膜全層にびまん性炎症細胞浸潤,陰窩膿瘍,高度な杯細胞の減少が認められる.寛解期では腺管の配列異常(蛇行,分岐),萎縮が残存する.これらの病理学的所見はいずれも非特異的なので,内視鏡所見と生検部位の把握は不可欠であり,総合的な判断が最も重要である.また,アメーバ赤痢*2をはじめとする感染性腸炎やCrohn病*3など除外診断も必要である.
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