Coffee Break
見る 8.鏡と写真機
長廻 紘
pp.1341
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113925
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白雪姫の継母である王妃は,自分が世界で一番美しいと信じており,彼女のもつ鏡もそれに同意していた.ある日,王妃がその鏡に「世界で一番美しい女性は」と聞くと,白雪姫だという答えが返ってきた.王妃は怒りのあまり,白雪姫を森に連れて行き,殺して肝臓をとってくるように云々(グリム童話『白雪姫』).
鏡はなんでもありのままに映す.鏡は鑑とも書き,模範・手本とすべきものを表す.『資治通鑑』や『吾妻鑑』のように歴史書の書名につかわれる.内視鏡,顕微鏡のように正しく見るための道具にも用いられる.鏡はカミに通じ,古来霊的なもの,嘘をつかないものと信じられている.しかし,鏡は決して真実をありのままに映すのではない.「見る」の場合と同じように,鏡を見るのは人だから見る人が見たいようにしか映してくれない.鏡の中で自己を客観視できる目を養わなければ鏡を見ても真実はわからない.
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