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編集後記
清水 誠治
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1大阪鉄道病院消化器内科
pp.1183
発行日 2012年6月25日
Published Date 2012/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113538
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春間賢先生,江頭由太郎先生とともに本企画を担当した.
本誌で大腸憩室が最初に取り上げられたのは1975年6号で,本邦の憩室研究が緒についた時期である.“消化管憩室症”をテーマとしているが,かなりの部分が大腸憩室に割かれている.巻頭の矢沢論文で披露されているエピソードが極めて興味深い.国際消化器外科学会の席上でDr. Welchから次のように言われたそうである.“日本の結腸憩室症は大問題ではないであろう.しかし,米国では5歳の小児にも憩室が発生して,現在疫学的にも大問題であり,日本も近い将来同じような運命をたどるであろう.”この予言は本邦での現状をみるに,既に的中している.その後,厚生省の班研究が発足し,大腸憩室研究の機運が高まり,1980年に15巻8号で“大腸憩室”が再度取り上げられた.全国集計や剖検による詳細な検討により同時代における大腸憩室の全貌がほぼ示されている.欧米で“diverticular disease of the colon”という用語が大腸に憩室が存在するすべての状態の意味で用いられていたことから,その訳語として“大腸憩室疾患”が導入された.語感として“憩室症”という用語が適切という指摘もあったが,それ以前に多発憩室が存在する状態を表す“diverticulosis”の訳語として“憩室症”が用いられており,混乱を避けるために敢えて“大腸憩室疾患”という言葉が用いられたという経緯がある.
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