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抗TNFα(tumor necrosis factor α)抗体をはじめとする生物学的製剤の登場はIBD(inflammatory bowel disease)など慢性炎症性疾患の治療を一変させた.2008年に提唱された関節リウマチの世界的なガイドラインTreat to Target(T2T ; 目標達成に向けた治療)と同様の考え方をIBDに導入したのがSTRIDE(Selecting Therapeutic Targets in Inflammatory Bowel Disease)と呼ばれるミーティングであり,最初の提言が2015年になされた.その中で臨床症状消失とともに内視鏡所見の改善が治療目標に掲げられている.本誌では2018年2月号で「IBDの内視鏡的粘膜治癒—評価法と臨床的意義」が特集された.昨年改訂されたSTRIDE-IIと初版との違いは本号の序説に要約されているので繰り返しは避けるが,治療目標がより厳格化されている.なお,江﨑も序説で触れているように,粘膜治癒という言葉が近頃では内視鏡的寛解に加えて組織学的寛解の基準を満たした場合へと変化している.当初,組織学的寛解の意味で用いられた言葉が内視鏡的寛解を指すようになり,さらに両者を包含するに至る過程をみていると,まさに言葉は生き物であると痛感する.
内視鏡的寛解と判断されても組織学的に炎症細胞浸潤がみられることが少なくない.潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)における組織学的寛解は炎症細胞浸潤の消失が最低限必要と考えられるが(八尾論文),腺管構築を含めたcomplete normalizationは治療目標としてハードルが高すぎる.またCrohn病(Crohn's disease ; CD)における基準の設定はさらに困難に思える.
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