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食道アカラシアは食道運動機能不全の1つである.A-chalasiaはギリシア語に語源を有し,“弛緩することがない”の意味である.この病態の本質は,“嚥下時の下部食道昇圧帯(lower esophageal sphincter;LES)の弛緩不全”である.Auerbach神経叢の変性によると言われている.また食道運動機能不全として,1次蠕動波が消失して,同期性収縮がみられることが多い.大きく分けて,(1) classic achalasia(噴門の弛緩不全と食道体部の蠕動の消失と拡張),(2) vigorous achalasia(噴門の弛緩不全と食道体部の異常収縮),(3) そのほか,に分けて考えることができる.特にvigorous achalasiaでは,嚥下困難のみならず,強い胸痛を伴うことも多い.胸痛が強い場合は,長い筋層切開が望まれる.また診断においては,high resolution manometryの有用性が報告されており,Chicago分類として広く用いられている.Type Iがlow pressure contraction,Type IIがhigh pressure contraction,Type IIIがspasticである.
治療として,薬物療法,ボツリヌス毒素注入法,バルーン拡張法1),腹腔鏡下筋層切開術2)~4)などがあったが,近年,内視鏡的筋層切開術(per-oral endoscopic myotomy;POEM,Fig. 1)5)が開発され,minimal accessの根治術として注目を浴びている.POEMはこれまで202例(2012年3月14日現在,昭和大学横浜市北部病院)に施行されており,良好な治療成績である.POEMでは経口内視鏡で食道の内腔から筋層にアプローチするが,基本的にはHeller筋層切開を行っており,その長期成績はHeller筋層切開に準ずるものと考えられる.
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