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食道webは食道の狭窄であり,食道入口部付近に発生する膜様の構造物を指す.下咽頭の無症候性webも健常人の10%程度認められる.狭窄部は食道粘膜と粘膜下層から構成されており,境界は明瞭である.webは食道中部の発症はまれである.膜様狭窄の口側,肛門側ともに扁平上皮で覆われている.組織学的には炎症所見を伴うことは少ないとされる.嚥下困難を伴い食道下部に生じるリング状の狭窄はSchatzki ring(lower esophageal ring)1)と呼ばれている.lower esophageal ringの肛門側上皮は円柱上皮である.上部食道webによる嚥下障害と鉄欠乏性貧血を合併するものは,Plummer-Vinson症候群(別名Patterson-Kelly症候群)2)~5)と呼ばれている(Fig. 1a).
成因としては,先天性のものや,逆流性食道炎・そのほかの食道炎などの炎症によるもののほか,外傷などが考えられている.web保有者では食道癌の罹患率が高いとの報告もあり,注意を要する.比較的まれであるが類似の所見として鑑別すべき疾患として,平滑筋腫,神経腫,過誤腫,血管異常,悪性腫瘍などが挙げられる.webの存在は食道X線造影検査や上部内視鏡検査で容易に診断される.X線造影では食道内腔の膜様の突出にて認識される.膜様狭窄は必ずしも全周性ではなく,偏側性であったり複数の狭窄が連続することもある.食道webの治療は内視鏡的なwebに対するバルーン拡張やブジー,web切除が有効である.Plummer-Vinson症候群の場合は鉄剤の補給,栄養状態の総合的な改善などの治療により消失することも多いとされている(Fig. 1b).
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