特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
食道web(esophageal web)
吉田 操
1
1東京都立駒込病院外科
pp.357
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104029
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食道の狭窄のうち,膜様の構造物で発生するものを言う.狭窄部は食道粘膜と粘膜下層で構成されていて,境界明瞭である.webは食道の上部,中部,下部にみられるが,この膜様狭窄の口側面と肛門側面ともに扁平上皮で構成されている.組織学的には炎症所見を伴うことは少ないとされているが,生検組織診断では炎症所見を伴うこともある.下部食道に発生する膜様の狭窄には,webとlower esophageal ring(Schatzki ring)の2つがあるが,lower esophageal ringの肛門側面は円柱上皮で覆われている点が異なっている.上部食道のwebのうち,食道の通過障害に鉄欠乏性貧血を伴うものは,Plummer-Vinson症候群あるいはPatterson-Kelly症候群と呼ばれている.
病因としては,先天性のもの,逆流性食道炎およびその他の食道炎が考えられる.類天庖瘡,潰瘍性大腸炎,hereditary epidermolysis bullosaなどの疾患と合併することが知られている.また,頻度は低いが類似の所見を呈する疾患として,平滑筋腫,神経腫,過誤腫,異常血管による圧排,悪性腫瘍などの報告があるので鑑別診断の際は考慮しなければならない.診断はX線あるいは内視鏡検査で特徴ある所見から明らかである.膜様の狭窄は,必ずしも全周性である必要はない.後天性のものでは偏側性である場合が少なくない.食道webの治療は,webの切開あるいは,機械的に破壊することで症状の改善が期待できる.
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