特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
linitis plastica型癌(linitis plastica type carcinoma)
磨伊 正義
1
1金沢大学がん研附属病院外科
pp.318
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103990
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元来,linitis plasticaという名称はBrinton(The Disease of the Stomach,1859)が名付けた病変で,胃全域の主として粘膜下組織に均等状の強い結合織・増生を生じ,胃がleather bottle状に硬化する病変に名付けたものであった.当時は原因不明の炎症性のものであろうとされたが,その後の研究で,スキルス胃癌の一型であることがわかった。すなわち粘膜面の原発癌巣は小さく,主として胃壁全層に広範に浸潤した癌細胞が強い結合織・増生を惹起した状態,これがlinitis plastica型癌の特徴である.したがってlinitis plastica型癌は厳密にはスキルスの一亜型であるが,4型,びまん浸潤性胃癌などと同義語に使われることが多く,用語上若干の混乱を生じているのも事実である.
中村(恭)は,胃底腺領域に発生した癌が粘膜下層以下の胃壁全層へびまん性に深部浸潤を起こした結果,肉眼的には胃壁全体に硬化性の肥厚を来し,管状あるいはleather bottle状を示す胃癌をlinitis plastica胃癌と命名し,この考え方が一般に受け人れられている.磨伊らはこのlinitis plastica型胃癌には2つのタイプが存在すること,すなわち,①巨大皺襞型,②粘膜萎縮型(胃炎型)が存在することに注目している.前者は若年者,女性に好発し,胃炎性変化の少ない胃に発生しているのに対し(Fig. 1),後者は圧倒的に高齢者,男性に多く,腸上皮化生の伴う萎縮性変化の高度な胃に発生しており(Fig. 2),それぞれの生物学的態度を異にしている.
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