ディスカッション
本号掲載:「早期大腸癌の病理学的検討」(下田忠和,他)について
中村 恭一
1
,
下田 忠和
2
,
武藤 徹一郎
3
,
渡辺 英伸
4
,
喜納 勇
5
1筑波大学基礎医学系病理
2東京慈恵会医科大学病理
3東京大学第1病理
4新潟大学第1病理
5浜松医科大学第1病理
pp.977
発行日 1987年8月25日
Published Date 1987/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403113027
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論文は,客観的に把握できるPG,茎の有無,大きさ,そしてsm浸潤の癌量という所見から大腸癌の発育進展に関する解析を行い,その帰結として“進行癌へと発育進展する大部分の早期癌は,PG(-)のde novo cancerである”としています.論文にみられる所見からは,確かにそのような結論が導かれます.しかし,現在,PG(-)の早期de novo cancerとされた前段階の状態が問題となっています.
すなわち,小さなあるいはPG(-)のde novo cancerがあった場合に,大腸癌組織発生“大腸癌の95%は腺腫由来である”との立場からは,その学説に整合性を持たせるために“腺腫が癌化して,癌が腺腫成分を完全に置換してしまった状態”あるいは“表面の腺腫と癌の部分が脱落消失してしまった状態”と,組織標本上にみられる所見という事実の背後にあることを探った解釈をします.逆に,“大腸癌の70~80%はde novo cancerである”との立場からは,“そのような癌は70~80%の確率でde novo cancer”であると解釈します.したがいまして,PG(-)癌がde novo cancerであることを主張されるためには,どうしても上記解釈に対して反論できるような証拠あるいは説明が必要となってまいります.それらについて,先生はどのようにお考えでしょうか?
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