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海外文献紹介「汎および左側潰瘍性大腸炎における癌:リスク決定因子について」
小林 世美
1
1愛知県がんセンター第1内科
pp.1010
発行日 1980年10月25日
Published Date 1980/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112803
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Cancer in Universal and Left Sided Ulcerative Colitis: Factors Determining Risk: A. J. Greenstein, D. B. Sachar, H. Smith, et al(Gastroenterology 77: 290~294, 1979)
1960年から1976年の間にニューヨークのマウントサイナイ病院で確診された267例の潰瘍性大腸炎中に26例(9.3%)の癌の合併を発見した.全結腸炎の158例中21例(13%),左側結腸炎では109例中5例(5%)に癌が起こった.S状結腸と直腸に限局していた5例には癌の発生をみなかった.炎症の罹病期間と癌の発生率の関連では,10年以内で0.4%,10~20年で7.4%,20~29年で15.9%,30~40年では52.6%を示した.左側結腸炎では20年以内に癌の起こった例はなかった.30年以上の例では10例の大腸癌発生例中4例が左側型結腸炎であった.30年以上たって癌の出た頻度は,左側結腸炎9例中4例(44%)であり,全結腸炎の場合の10例中6例(60%)に匹敵していた.癌の起こる可能性は,30年で34%,40年では64%と推定された.発症時年齢と癌の関連がよく言われてきたが,この研究では,左側型,全結腸型共に発症年齢が若かったために癌の頻度が高いという傾向を認めなかった.炎症の罹病期間が長くなると頻度が増すのであって,若年発症のためではなかった.
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