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現在の早期胃癌分類法は規約が不備で,そのため判定に著しい個人差を生ずるのは当然である.病巣の隆起や陥凹の程度を主眼とした分類法でありながら,もっとも重要で根本的な「何を基準にしての隆起や陥凹であるか」があいまいである.そのため,ある病巣の一部を隆起と見る者と陥凹と見る者が出てくることさえまれでない.また,癌病巣のみを判定の対象にするのか,癌病巣に直接附随する非癌粘膜の変化も加味して判定するのかも規定されておらず各人各様に判断している.早急にこの2点を明確にすべきである.私は,癌病巣に直接附随する非癌粘膜の陥凹や隆起性変化を除いてその外周の粘膜面を基準にして高低を決めたらよかろうと考えている.また,癌病巣に直接附随する非癌粘膜の変化は肉眼的にはその部が癌かどうかは判定できないので,一応判定の対象に加えた方がよいと思う.このように判定の足場を固めて,何cmまでの隆起をⅡa,それ以上をⅠ型と決める.陥凹についても同様である.後は純客観的に機械的に測定(目測でもよい)して判定し,もし混合型の場合は優位を占める病変順に並べればよいと思う.以上のようにすれば主観の入り込む余地は減少し,世界中,誰が行なっても,大体同一の判定ができるのではなかろうか.このような処理の仕方なら現在の分類法は必ずしも変更する必要はないと思う.ある形をした病変はこう判定することにしようと規約を作ること自体が主観的な作業で,誰かの主観で決めなければならず,これには必ず反対意見の者もでてくる.Ⅱc(Ul),Ⅱc(Uls)などの方法をとり入れるとますます主観が入り,解釈の仕方が異なり,あるいは組織発生的な考え方が判定に忍びこむすきを与え,混乱を招く元になるのではなかろうか.つぎに,この分類は肉眼分類であるから,切除胃を開いて粘膜を表面から見た上での判定方法と思われる.したがってX線,内視鏡的観察の段階では型の決定をすべきではないと思う.それらの段階では「Ⅱc疑い」とするか,Ⅱc(X線的),Ⅱc(内視鏡的)とでもすべきである.また,肉眼的判定はおのずと限界があり,組織学的検査の結果,予想しなかった所見が得られることがまれでない.肉眼で陥凹と判定したが実は隆起であった,浅いと思ったが実は深かった,ここには癌があると思ったが実はなかった,ないと思ったが,あった,など色々のことがあり得る.この場合,胃癌取扱い規約に肉眼判定と組織学的判定(例えばOW,ow)があるように,組織学的検索による判定を捨てない方が将来のためによいと思う.肉眼判定が組織学的判定に一致することを理想としながら両手段による判定結果を併記してはどうであろうか,この際,組織学的判定には何らかの記号を附して.最後に,早期癌を統計的に検討する場合,同一診断レベル(X線のみ,内視鏡,肉眼,組織学的のみ)のものも集めて行ない,診断レベルを附記する必要があると思う.
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