Japanese
English
今月の主題 陥凹型早期胃癌の深達度診断
序説
陥凹型早期胃癌の深達度診断―研究の足どりを振り返って
Introduction
多賀須 幸男
1
Sachio Takasu
1
1関東逓信病院消化器内科
pp.127-128
発行日 1987年2月25日
Published Date 1987/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403112199
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
癌浸潤が粘膜下層以内にとどまるものを早期の胃癌と呼ぶと定義されたことにより,癌の深達度は胃癌の臨床にとって最も肝要なことになった.この定義を決める中心的な役割を果たされた村上忠重先生の慧眼には驚くほかないが,それを決めるに当たっては,佐伯重治先生(元東京女子医科大学教授,外科学)の論文を引用したと回想しておられる(早期胃癌の10年,胃と腸 7: 434-437, 1972).この佐伯先生の論文とは,「胃癌ノ悪性度ニ就テ,特ニ其組織学的所見ト遠隔成績トノ関係ニ就テ」(東京医学会雑誌 52: 191-230, 1938)である.既に古典と称してもよいこの重要な論文は,あまり知られていないが,今日の目でみても興味深いものであり,内容を紹介してみよう.
この論文は,大正11年から昭和6年までに東大塩田外科で胃癌根治手術を受けて治癒退院した237症例中202例の5年生存率を,細胞分化度,癌細胞の形態など20の組織学的特徴と対比して検討したもので,以下のように結論している.“上記諸特徴中遠隔成績ニ対シテ最密接ナル関係ヲ有スルハ深部発育ニシテ,全症例ヲ癌発育ガ粘膜下組織ニ止マリシモノ,筋層ヲ侵犯セルモノ,漿膜ニ達セシモノニ分類スル時ハ,夫々91%-36%-4%ノ永久治癒ヲ示セリ.即チ深部発育ノ状況ハ單独ニテ予後ヲ支配スルコトヲ証明セリ.一般ニ行ハルル分類ニヨル癌諸種ノ悪性度ヲ攻究シテ,予後判定上此ノ分類法ノ価値少キコトヲ認メタリ.”ちなみに粘膜下組織までにとどまったものは,202例中23例(11.4%)あり,上述のようにその5年生存率は91%であった.
Copyright © 1987, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.