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上部消化管疾患診断における内視鏡と同様に,大腸においても内視鏡検査の役割は甚だ大である.この分野でも長く硬性鏡が使用されてきた.消化管内視鏡検査の主目的が,病変の良悪性の鑑別であることに鑑ると,大腸の癌は直腸にその3分の2が存在するので,硬性鏡の役割は実に大きい.大腸ファイバースコープが出現した今日でさえも,大腸内視鏡検査で最も重要な位置を占めている.上部消化管内視鏡から硬性鏡が消えてファイバースコープにすべて置換ったことと大きな相異である.硬性鏡は肛門より20~25cm位まで検査出来るが,これより上は大腸ファイバースコープが登場するまで全く未踏地であった.現在では世界中到るところで大腸ファイバースコープが,診断そして治療(Polypectomy)に用いられている.筆者も3年来大腸内視鏡検査を担当しているが,とにかく大腸は壁が薄く,屈曲がはげしいので,常に穿孔の危険を感じながら施行せねばならないのを痛感している,大腸内視鏡,殊にファイバースコピーが流行期を迎え,一般病院でも行われようとしているとき,この検査の適応と禁忌を十分認識しておきたいものである.
直達鏡による検査は,真直な金属棒を20~25cm挿入するだけで技術的には難かしくない.私共の場合,直腸出血或は粘液排出等を適応症としている.熟達者が行えば極めて簡単に出来るので,下部消化管のルチン検査として行う人達もある.あたかも私共が胃カメラを集検で用いる如く,集検的な使い方が直腸の早期癌発見に寄与するかも知れない.従って大腸X線検査が先行しなくてもやれる.X線検査が先行して,直腸S状結腸接合部までに病変を認める場合,直達鏡を用う.私共の臨床の実際では,直腸癌の診断確認と,出血の様相が痔疾患を疑わせるとき直腸粘膜に異常のないことを知りたい.この検査の対象となる主な疾患は,直腸癌,ポリープ,直腸炎,放射線直腸炎等であるが,全症例の約60%は異常を認めない.私共の検査室では,週に1回,4~5例に施行するが,筆者のいたシカゴ大学消化器科では,毎日15例以上を数える.大腸疾患の多いアメリカでは,日本の胃内視鏡並である.
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