今月の主題 意外な進展を示す胃癌
意外な伸展を示す胃癌症例
意外な進展を示す胃癌症例を見て
五ノ井 哲朗
,
芦沢 真六
,
望月 孝規
pp.509-511
発行日 1974年4月25日
Published Date 1974/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111819
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スキルスのX線像について
五ノ井 哲朗
日常の臨床でわれわれは胃癌の経過をかなり的確に予測することができる.だが,現在のわが国におけるほど,1例1例の胃癌症例が綿密に検討されているという状況はかつてなかったことではないか,とすれば,その中にはこれまでの常識を越えた意外な発育の経過や急激な進展を示す症例なども数多く経験されているのではなかろうか,そのような期待をもって症例をみせていただいたが,胃外に発育して下腹部腫瘤の臨床像を示した虎の門病院の症例と,隆起型の胃癌が短期間に急激な発育を示した国立がんセンターの症例を除けば,あとはすべてスキルスの症例であった.意外にというか,当然ながらというべきか,意外な進展を示す胃癌はヴァリエーションに乏しいということができる.この中で同じく意外といっても,スキルスの意外性はややニュアンスがちがっている.スキルスは稀な,というほどの疾患ではなく,その意味での意外性はない.また,急激な進展を示すことは,むしろスキルスの常であって,この点でも意外というにはあたらない.意外なのはスキルスの経過そのものではなくて異常がないと診断された胃に,わずかの時日をおいて突然致命的な癌が発見されるという,もっぱら臨床的な出来事としての意外さである.
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