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粘膜像と前壁二重造影像は前壁病変の拾い上げをねらった撮影法であり,いずれも胃ルーチンX線検査の最初に行われる.粘膜法は約15~20mlのバリウムを服用させ,腹臥位で撮影され,前壁二重造影像は少量の造影剤と更に発泡剤を服用させて,腹臥位で胃を膨らませて撮影される.粘膜像と前壁二重造影像の両者を同時に撮影することはなく,いずれかを選択して用いている.
1.粘膜像の描出能
われわれは以前から粘膜法により前壁病変の拾い上げをしてきたので,主として粘膜法について述べる.粘膜法は少量のバリウムを服用させ,腹臥位からやや頭低位にし,体位を少し変換して胃内にバリウムをゆきわたらせた後,やや第2斜位で大きく深呼吸して胃を延ばして撮影している.粘膜像が少量のバリウムを用いるのは,後壁ではバリウム量が多くても体位を変換することによりバリウムを動かして容易に二重造影像として撮影することができるが,前壁ではバリウムを動かすことが難しいことによる.そのため,少ないバリウムを胃前壁内にゆきわたらせ,病変部でバリウムをはじかせるようにして撮影するわけである.したがって,バリウム量が多いと凹凸のわずかな病変は描出できなくなる.良い粘膜像とは胃体部の皺襞が離れた状態で撮影された像と考えている.それには呼吸運動を用い,大きく息を吸わせた吸気位にすると胃が下方に引き下げられ前述した状態になる.Fig. 1aが吸気時の粘膜像であり,Fig. 1bが呼気時の粘膜像である.吸気時の粘膜像ではバリウムが広くゆきわたり,胃が延びた状態になる.主たる読影のポイントは皺襞の走行の異常で,粘膜像で読影できる範囲はバリウムに覆われる前庭部,胃角部,体下部,(体中部)までである.しかし,バリウム量が少ないため,胃液の影響を受けやすく,微細な変化を描出することは困難と考えている.
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