Coffee Break
腹痛を止むること神の如し
五ノ井 哲朗
1
1福島県立本宮病院
pp.656
発行日 1986年6月25日
Published Date 1986/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110357
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救急隊員に抱えられて,患が闖入してきた.44歳の家婦で,胃潰瘍が治癒した後,3か月ほどガスター,セルベックスによる維持療法中の患者である.昨日の夕方から便と尿が全く出なくなったという.便意も尿意もしきりなのだが,さて,トイレに行ってみると,少しの便も1滴の尿もないというのである.昨夜は20~30回もトイレに通い,苦しいのと不安とで一睡もせず,朝になるのを待って近くの診療所にゆき,注射と浣腸をして貰ったが,やはり便も尿も出ず,ますます苦しくなるばかりで,救急車に運ばれて来診したという次第である.話の間もじっとしておらず,顔には冷汗が流れている.腹部は全体に膨満,緊張して,臍下には小児の頭ほどに膀胱が触れ,指先で軽く押しても痛い.
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