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Effect of caerulein in patients with biliary colic pain: Nicola Basso, Maurizio Bagarani, et al (Gastroenterology 89: 605-609, 1985)
セルレインは,コレシストキニンと同様,強力な胆囊収縮作用とOddi氏筋弛緩作用を有するが,胆石症などにおける胆道痛痛を効果的に抑えることが示されている.すると,今まで胆道疵痛は結石による胆囊管の閉塞に対し胆囊が収縮することによって生ずると考えられてきたが果たしてそうであろうか.最近の研究では,セルレインが血漿と脳脊髄液中にβエンドルフィンを放出し,中枢性に鎮痛作用を及ぼすことが示された.しかし,この機序が胆道疵痛の抑制に働くという証拠はない.βエンドルフィン関連の鎮痛作用はナロキソン(麻薬拮抗剤)で阻害される.セルレインの胆道疵痛掬制効果がナロキソンで阻害されるかどうか,まだ解明されていない.
そこで著者らは,セルレインの鎮痛作用を詳しく検討するため,胆道痂痛を有する胆囊結石患者24名を対象に無作為二重盲検試験を実施した.セルレイン1ng/kg/minを15分かけて静脈投与したところ,偽薬より明らかに高い鎮痛効果が得られた(P<0.001).すなわち,鎮痛効果が認められたのは,セルレイン群12名のうち9名,偽薬群12名のうち2例で,効果発現時間の平均は前者は7.8±1.2分,後者は20.5±3.4分であった.また,この効果はナロキソン0.4mgの2回静脈投与によって抑制されなかった.更に,胆摘術後Tチューブの留置された7名を対象に,生理食塩水の急速注入により胆管内圧を上昇させ,それに対するセルレインと生理食塩水の静脈投与の影響を比較した.生理食塩水の場合,胆管内圧が40cmH2Oに達した所で5名が疹痛を訴え,セルレインの場合は,一定の胆管内圧に達するのに非常に高い注入圧を要し,疹痛閾値まで胆管内圧を上げることはできなかった.この胆管昇圧実験による疹痛が胆道疵痛と類似していたのは,胆道疵痛の原因が胆嚢収縮ではなく,総胆管の拡張であることを示唆している.したがって,セルレインはOddi氏筋を弛緩させ,胆管内圧を下げることにより胆道痂痛を抑制すると考えられ,胆道疵痛の治療に特異的かつ有益な薬剤である.
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