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Personality profile and affective state of patients with inflammatory bowel disease: Robertson DAF, et al (Gut 30; 623-626, 1989)
炎症性腸疾患(以下IBD)患者には,一種独特の性格が存在する,と内科医や外科医の多くは考えている.著者らは,この“IBD気質”とも言うべき性格が,病態に先行して存在しているものなのか,それとも病態の結果として生じたものなのか,更には,病態の再然とどのような関係にあるのかを知るために,面談とアンケートによる調査を行い,精神科学的判定基準をスコアー化し,分析を行った.調査対象は,確定診断された80名の慢性IBD患者と,確定診断前の22名のIBD患者(いずれも非手術例)で,40名の糖尿病患者を慢性疾患コントロール群とした.調査の結果,IBD患者は急性,慢性を問わず対照群に比べ,有意に高度の神経症気質と内向性を示し(p<0.05),更にこの傾向はIBD患者の中でも診断確定前の患者に強く見られた.また,抑うつ状態は,慢性IBD患者の活動期に見られたが,IBD群全体では一般的なものではなかった.内向性は,罹患期間が長期にわたるほど強まる傾向が見られた(r=0.51).一方,IBD患者の多くは,精神状態と病勢の変化の間に関連があることを認識しており,最も増悪を促進する因子として,日常生活におけるストレス性の強い出来事を挙げている.以上より,IBD気質は病態に先行して存在し,それに伴う消化管および免疫機能の障害が,IBDへの引き金になっていると結論づけている.
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