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本書は1981年9月にエルサレムにおいて開かれたIBDに関する国際シンポジウムの抄録を集めたものである.このシンポジウムは,序文にもあるように,この方面の世界の権威ある研究者を一堂に集めて,3日間にわたり最新の情報,研究成果を交換し,IBDに関する知識と理解を更に深めようという目的で開催されたものである.出席者の顔ぶれをみてもJanowitz,Kirsner,Shorter,Yardleyらの著名な研究者がずらりと並んでおり,この方面に興味のある者にとっては出席できなかったのが残念な気がするに違いない.
本書の内容は 1)New pathological concepts,2)Etiology,3)Pathogenesis,4)Management,5)New directions for future researchの5章に分かれており,合計26の抄録が収められている.細かい内容は省略するが,読み通してみると欧米の専門家たちのこの方向における動向の大略がつかめて興味深い.臨床的にはよりCrohn病の治療の比重が重くなっていることは明らかであり,etiologyに関しては1つの壁に突き当たっているように見受けられる.最後の章でKirsnerも指摘しているように,多種多様な最新の知識を総合することによって,IBDがよりよく理解され,その本態を解く鍵が見付かるのかもしれない.その意味でこのシンポジウムは大変重要な役割を果たしたのであろう.本書を読むことによってその一端を知ることができるのは,この方面の専門家にとっては大変意義深いことである.北欧の研究者が含まれていないこと,抄録集であるために,記述,タイプのスタイルが一致していないことが気になるが,内容から種々の情報を探し出すのに問題とはならない.1984年9月に再び同様な国際シンポジウムを,エルサレムで開催する意向であると序文にあるが,本書の内容をみると是非出席して直接にこの方面のスーパースターたちの話を聞いてみたい欲求にかられる.この方面の専門家には一読を勧めたい本である.
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