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1982年5月,横浜での第24回日本消化器内視鏡学会総会のパネルディスカッションで“上部消化管スクリーニング法として内視鏡検査はX線検査に代わりうるか”というテーマを取り上げ,多賀須,西沢両博士司会のもと各パネリストに活発な意見を開陳していただいた.
顧ると,1950年の胃カメラの発明後は,たゆみなくその改良が進められ,やがて胃カメラ研究会(現在の日本消化器内視鏡学会の前身)の発足と共に,本診断法は日本全国に急速に普及していった.そしてわが国における胃疾患診断学,特に早期胃癌診断学の確立に多大の貢献をした.しかし本検査法はいわば盲目撮影に近いものであり,かつ当時の機構上,胃内の撮影が困難ないし不可能な部位も多く,したがってスクリーニング検査としての上部消化管X線検査は不可欠であり,その写真を参考として胃カメラ検査は施行された.しかし,ルチーンのX線検査で見逃されていた病変が胃カメラ写真に鮮明に捉えられたり,X線検査にて明瞭に出現している胃体部後壁の病変が,どうしても胃カメラに捉えられないなどのギャップがあり,当時はX線検査と胃カメラ検査は車の両輪にたとえられ,両者相補い合って,より正確かつ微細な診断ができると唱導されたものである.またその当時は白壁一門による二重造影法が確立され胃微細診断能も飛躍的進歩を示した時期でもあり,胃カメラはX線検査に続いて行われるべきものと位置付けされていた.もっとも既に当時,胃集検のスクリーニングに胃カメラを用い,高率に早期胃癌や病変の発見を報告していた研究グループがあったが,これは当然食道や,胃の一部,更に十二指腸における良悪性病変のスクリーニングには目をつぶったもので,普及はみられなかった.やがて米国にて1958年に発明されたHirschwitzのファイバースコープが1962年日本に輸入されたのを契機として早くも1964年には国産化が成功,胃カメラとファイバースコープを組み合わせた器種も出現し,胃内視鏡検査の一大快進撃がここに始まった.内視鏡学者とメーカーとの共同研究のもとに,まさにとどまる所をしらぬ改良と進歩が重ねられ,ついに1973年panendoscopeの出現により,咽喉部から食道,胃,十二指腸第2部まで,全く盲点なしに観察し,怪しい微細病変については色素散布法による明瞭識別化ないし直視下生検による組織学的検索が容易に行えるようになった.誇張した表現をすれば,上部消化管における病変は,あたかも皮膚表面の変化と同様に観察し,拡大撮影し,組織検索も可能となったわけで,消化器病に携わる医師の長年の夢が実現したわけである.20数年前の胃カメラ時代には誰も想像しなかったであろう.この間の胃内視鏡検査の進歩発展の道のりを共に歩いて来た筆者にとって,この変遷は誠に印象深いものであった.
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