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はじめに
大腸癌と腺腫の因果関係については,古くから肯定派1)2)と否定派3)4)に分かれ,種々の臨床的,病理学的根拠に基づいて論争が繰り返されている.肯定派の考え方は,“大腸癌の大部分(95~100%)は腺腫から発生する(adenoma-carcinoma sequence説)”という考え方で,否定派のそれは,“大腸癌の多くは腺腫を発生母地とするよりむしろ正常の大腸粘膜から直接に発生する(denovo説)”という考え方である.近年,わが国でも内視鏡検査の普及により,平坦型,陥凹型早期癌が発見されるようになったこともあり,大腸癌の組織発生に関する議論が一段と盛んであり,武藤ら5)6)の支持するadenoma-carcinoma sequence説,中村ら7)~9)のde novo説のほかに,喜納ら10)の腺腫・癌同時発生(adenoma-cancer simultaneity, cancerization by progression)説などが提案されている.
このように大腸癌組織発生の主経路が何かの議論が生ずるのは,現時点では臨床的情報量がいまだ十分でないこと,材料の検索法の差,診断者による癌・腺腫の組織学的判定基準の差などの関与が考えられる11).このうち,病理医の立場からは,組織学的判定基準の差が大切と思われるので,本稿では,現時点での筆者の大腸腺腫,癌の組織学的診断基準を素直に述べると共に,大腸腺腫と癌の関係についても簡単に触れる.諸賢のご批判を仰ぐ次第である.
The auther's current diagnostic criteria of adenoma and carcinoma of the colon and rectum have been stated. Based of the criteria twenty-five cases with early colorectal carcinoma less than 10 mm in size have been studied. Eighteen lesions of them (72%) were considered to have been derived from adenomas, whereas there was only one lesion which could be regarded as de novo carcinoma among those less than 5 mm in size. Judging from those results, the causal relation between adenoma and carcinoma seemed affirmative.
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