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“大腸の腺腫と癌”の特集といった場合には,その意味する内容はたくさんあり,なんとなく摑みどころがなく互いに関連性のない論文の集まりともとられがちです.しかし,その題名からまず何を想起するかというと,それは“大腸癌の構造”ということです.つまり,大腸の腺腫と癌に関する諸々の臨床病理学的な事象,癌組織発生,そして癌組織診断基準についてです.それら3つのことは個々に独立したことではなく圧いに関連している事柄であり(Fig.1),それらは“大腸癌の構造”を形成しているわけです.それらのことを切り離してしまうと題名の意味がなくなってしまいますから,それら3つのことに関するテーマが連続特集として2号にわたって編集されました.初めは,諸々の臨床病理学的な事象についてのこと,続いては癌組織診断基準についてであります.
さて,編集委員会で特集“大腸の腺腫と癌”の序説を書くように言われ,その際には公正に書くようにとの注文を受けました.それは,大腸癌組織発生“大腸癌の70~80%はde novo cancerである”を主張している私たちであるがゆえに,一方的な観点から感情的に書くことなく,両方の立場から“すじをとおして”ということでありましょう.言い換えれば,論理的であれと.ところでこの世では,論理とは冷たいもの,あるいは冷たい論理などと表現されることがあります.そうすると,冷たいとは感情的な形容によく用いられる言葉ですから,ここでは考えをどのよう書いたらよいのやら路頭に迷ってしまいます.なぜかというと,考えるとは言葉で考え,言葉は論理という規則で組み立てられていますから,考えをあるいは問題点を記述するためにはどうしても論理という規則を踏まえねばならないからです.しかし,論理を冷たく感じるも感じないも人それぞれの感性によるものですから,ここでは常日ごろ“大腸癌の構造”について考えていることの一端を,より論理的であるように述べさせていただいて序にかえたいと思います.
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