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書評「MRI診断演習」
宮坂 和男
1
1北海道大学放射線科
pp.212
発行日 1997年2月25日
Published Date 1997/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105011
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画像診断に関するテキストの目次立ては,疾患ごとである場合が圧倒的に多い.しかし,日常診療では,最初から診断はわからない.様々な所見から,可能性ある疾患をいくつか想定し,所見にそぐわない疾患をふるい落とし(鑑別診断し),最も可能性の高い診断へと絞り込む.
荒木力先生による「MRI診断演習」には,3つの特徴がある.第1は,疾患ごとではなく症状や特徴的画像所見からスタートするQ&A形式である.可能性のある疾患,病態を読者個々に考えさせる.謎解きするような楽しさがある.第2に,画像所見から病態・撮像原理に至るまでの記述が階層化されている.Q&Aの後で,なぜこのような画像所見が起こるのだろうか?と問う.病態は?撮像法は?疾患の病態機序が説明される.次いでMRIの原理的な説明がある.本書の中では“note”である.更に詳しく調べたければ厳選された引用文献がある.階層化されているので,興味があれば次々と進むことができる.時間にゆとりのない人は,中途でやめればよい.第3に,MRI原理が付録(appendix)として巻末に掲載されている.MRIの原理は複雑である.加えてほとんどのテキストは,原理が第1章を占める.段階的に覚える(教育する)という伝統的教育法の流れである.それでは最初の数頁を読んで混乱の深淵にはまるかもしれない.本書は症例でMRIを実感した後の原理なので,問題点が比較的明確にされており,臨床に直結している.症例だけでなく,もっと原理を知りたいと思う人の欲求不満も解消してくれる.
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