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書評「図解 原理からわかるMRI」
片田 和廣
1
1藤田保健衛生大学衛生学部診療放射線技術学科
pp.824
発行日 1998年5月25日
Published Date 1998/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103717
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MRIが現在の画像診断法で占める役割の大きさについて,異論を唱える者はいないであろう.その重要性はまさに年ごとに高まっていると言ってよい.一方で,大部分の医療関係者あるいは学生にとって,MRIを理解することは決して容易ではない.その理由の1つは,MRIの原理自体が,100年を越える歴史を持つX線に比して臨床医療の場においてなじみが薄かったことである.すなわち,MRIを学ぶことは,われわれにとって全く新しい世界を学ぶことなのである.更に学習の過程において現れる数式や物理知識が,MRIをいっそう疎遠なものとしている.
本書は,この難解と思われているMRIを可能な限りわかりやすく解説することを目的として記された教科書である,もちろん,この分野では従来多くの入門書が出されており,それぞれに多くの優れた点を持っている.本書がこれら類書と大きく異なるのは,著者自身がMRIについて教鞭をとる過程で書きためた講義資料がもととなっている点である.このため,各頁の左側に図(OHPシート),右側にノートを対比させ,項目ごとに簡潔に記載するという形式をとっている.人に教える場合には,教員自身がまずその事象について理解している必要がある.本書を一読して気づくのは,著者自身がMRIを理解しようとして努めてきた足跡がこのノートからうかがえることである.本書の69の項目は,その1つ1つが,著者自身の疑問をきっかけに,十分な考証と推敲を経て記されている.すなわち,MRIを学ぶ者がどこで迷い,どこで行き詰まるかを十分に把握したうえで書かれている.この点こそが,本書を他書から際立たせる点であろう.
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