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書評「臨床薬理学」
井村 裕夫
1
1京都大学
pp.1103
発行日 1997年7月25日
Published Date 1997/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104976
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薬物療法は治療医学の中でも最も重要な位置を占めるものである.medicineという言葉に,医学と同時に薬という意味があるのも,両者の極めて密接な関係の歴史を物語っている.もちろん現段階では,手術や放射線療法などの治療を要する疾患も数多いが,切らずに癒やす薬物療法は,治療医学の究極の目標と言ってよいであろう.
しかし,薬物療法も決して容易なものではない.新しい薬の開発には,化学的研究,動物実験,そして臨床的な有効性と安全性の検討(治験)まで,長い時間,多大な労力と費用を必要とする.特に薬物の体内における動態と作用機構,他の薬物との相互作用,副作用とその発現機序の解明などは,決して容易に達成できるものではない.“薬を生み出すのは化学者であるが,歩き方を教えるのは臨床医である”という言葉がある.現在では歩き方を教えるには臨床医のみでなく,臨床薬理学者の果たすべき役割が大変大きくなっている.薬の使い方を研究する科学者が必要となってきているのである.
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