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polypoid growth(PG),non-polypoid growth(NPG)は池上・下田らが提唱した早期大腸癌の分類の1つである1)2).最近,その分類を進行癌に用いた検討が研究会や学会で散見される.そして,“進行癌ではNPGの形態をとるものが多いので,NPGタイプがメインルートであり,NPGタイプの早期癌(Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa)の多数が見逃されているだろう”と結語されて発表されている.はたして,単純にそのように導かれるのか?
Fig.1は1971年に発表された井川睦章先生の論文3)にある図である.この井川論文の研究は後に九州大学教授となる遠城寺宗知先生の指導で行われたが,それ以前に遠城寺先生は胃癌における粘膜内の拡がりを分類しており4)5),その分類をもとにしたものである.M1型は大腸癌の粘膜内の拡がりが潰瘍辺縁より0.5cm以内の極めて狭いもので,潰瘍辺縁粘膜に非癌粘膜部を認めるもの,M2型は粘膜内の癌の拡がりが潰瘍辺縁より0.5cm以上にわたるが,深部腫瘍主塊の拡がり範囲を越えないか同程度のもの,M3型は粘膜内の癌の拡がりが潰瘍辺縁より0.5cm以上で,しかも深部腫瘍主塊の拡がり範囲より広い拡がりを示すものと定義されている.すなわち,M1型がNPGに相当し,M2型,M3型がPGに相当する.潰瘍を有さない大腸癌は検討されていないが,潰瘍を有する155例の全割標本を検討した結果,M1型が77.4%,M2型は22.6%,M3型は0%であったとされる(胃癌ではM1型が42.5%,M2型が35.6%,M3型が21.9%).単純に“進行癌における粘膜内の癌は隆起性病変の名残りである”“隆起由来の癌はPG様の形態のまま進行癌となり,陥凹由来の癌はNPG様の形態のままの進行癌となる”という仮説が正しいとすれば,大腸癌はNPGが多いと導かれる.しかし,その仮説が正しければの話である.
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