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編集後記
工藤 進英
pp.1104
発行日 2000年7月25日
Published Date 2000/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104775
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大腸は多発癌の発生しやすい臓器である.したがって大腸癌を1個認めたときは同時性,異時性の大腸癌を見逃しのないように臨床的に対応する必要がある.治療後にも異時性多発癌の存在を十分に意識しながらfollow-upを行うことが肝要であり,今回の論文にても異時性癌の発生は2,3年の比較的早い時期と10年以降の遅い発生の2峰性があることが示されている.そのことは異時性多発癌には初回の見逃し例とclean colonからの新たな癌の新生の両者があろうことは想像に難くない.しかし一方において異時性多発癌では発育速度の速いde novo cancerの存在も無視できない.泉論文,今井論文に示されるように多発癌において早期癌の形態は表面型が多く,なかでも表面陥凹型の発生の意義が重要視される.過日,第51回大腸癌研究会が同テーマで行われたが,異時性癌症例で早期癌がなくすべて進行癌という施設も多くあった.陥凹型早期癌は臨床的に見逃されやすい形態でありX線や安易な内視鏡でのcheckは難しいことを示しているのかもしれない.表面型大腸癌は注意深い観察で発見されるものであり,大腸癌のhigh risk grorpである大腸癌術後症例ではこのような表面型,なかでも陥凹型を決して見逃さない臨床の姿勢が必要だろう.本号では形態,発生部位のほかにHNPCC,分子生物学的特徴など様々な観点から論じられたが,21世紀を目前に控え,現時点での通常の大腸癌の常識が今後どのように変わっていくのか,それを教えているようで興味深く読ませていただいた.
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