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編集後記
工藤 進英
pp.1540
発行日 1997年10月25日
Published Date 1997/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105235
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従来からIs型の大腸癌に対しては,多くの考え方があり,Ⅱaとの区別を含めて各人によりそれぞれ定義が異なるという状況であった.そもそも内視鏡像は虚像である.特に樽型歪曲収差のある電子スコープではそれが著しい.そのことの十分な把握なくして,内視鏡像だけでIs,Ⅱaを語ることは難しい.本号は,それらの矛盾点を十分に踏まえ,本格的にIsそのものを取り上げた特集号である.それぞれの筆者の考え方とevidenceを十分に楽しまれてほしい.
早期胃癌のそれを“模倣”した早期大腸癌の現在の肉眼形態分類は,多分に矛盾点があり,それをいかに整理し,正しく修正を加えていくかという点が,今日の内視鏡医を中心とした形態診断学を行う者の責務であろう.超音波内視鏡やpit pattern診断などが行える拡大内視鏡など,先進的な内視鏡が開発され,日常臨床でそれらが,十分に活用される時代である.しかし一方では,Is型そのものの形態の成り立ち,および発育進展が十分に解明されているわけではない.それでも,この数年で更に新しい知見が続々と出されており,隆起型や表面型の腫瘍の解析が成されている.polyp-cancer sequenceをたどるもの(mountain route)と表面陥凹型を起点とするde novo cancerのroute(direct route)の2つはIs型でオーバーラップし,全く異なった形態が,類似しているがためにIs型という1つの形態名で呼称されることになるという分類学上の矛盾である.しかし,診断学の進歩は,それを十分に鑑別できるまで前進したのである.
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