消化管病理基礎講座
胃癌の肉眼形態と組織像
滝澤 登一郎
1
1東京医科歯科大学医学部付属病院病理部
pp.1073-1078
発行日 2000年7月25日
Published Date 2000/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104769
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はじめに
胃癌の肉眼形態と組織像の関係は,胃癌取扱い規約に記載されている肉眼分類と組織型分類の対応の問題であるが,焦点を明確にするためには大腸癌の肉眼組織分類と比較することが重要である.胃癌と大腸癌の肉眼分類で異なる点は,大腸癌において表在型I型が有茎性(Ip),亜有茎性(Isp),無茎性(Is)の3型に細分類されている点である.有茎性のポリープ癌は表在大腸癌の代表的な肉眼型の1つであるが,胃においては有茎性のポリープ癌は比較的まれで,I型を亜分類する必要性がないのである.これに対して組織型分類は,大腸癌では腺癌が高分化,中分化,低分化型の3型に分類されているだけであるが,胃癌では,乳頭腺癌と管状腺癌が区別されており,更に低分化腺癌が充実型と非充実型に分類されている.胃癌における腺癌の細分類の必要性は癌の生物学的態度も含めて,多数症例の観察から帰納的に導かれた結果である.したがって,胃癌の肉眼形態と組織像の関係を概説する際には,胃という臓器固有の条件が肉眼像,組織像にどのように反映しているかが問題の中心になる.
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