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編集後記
吉田 操
pp.610
発行日 2000年3月25日
Published Date 2000/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104683
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食道表在癌の診断が,今大きく変わろうとしている.これまでは色素法を用いた内視鏡診断を開発し,早期発見に努め,内視鏡治療を確立することで精一杯であった.この成果は目覚ましかったし,食道癌の臨床に新たな分野を切り開くことができた.同時に,従来得難かった多くの知識を蓄積することができた.今回の企画"発育進展"(粘膜癌から粘膜下層癌へ)は,永年の懸案の1つである.この分野に立ち入ること自体がわれわれの目標の1つであった.食道癌発生の背景,初期病巣の確定,初期病巣から粘膜癌,そして粘膜下層癌への進展,そして様相を大きく異にする進行癌への発育経過を知ることは,学問的興味だけでなく診断・治療に寄与するところが大きい.しかし,このためには臨床,病理,基礎研究のそれぞれが相当の蓄積を持たねばならなかった.今,曲がりなりにもここに至ったが,20年余りを要したことを知る身には,ある種の感慨を覚えるのである.今回の企画はこの分野に第一歩を踏み出したという点で,大きな意味がある.この先の発展に期待したい.
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