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書評「Endoscopy of the Colon, Rectum, and Auns」
酒井 義浩
1,2
1東邦大学
2大橋病院消化器診断部
pp.1101-1102
発行日 1996年8月25日
Published Date 1996/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104224
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大腸内視鏡の入門書である.3部から構成されており,全体の15%を割いて総論的記述にあて,残りの半分を技術に,最後を各疾患の解説に費している.
最初に開発の歴史が語られ,顔写真入りでB. Overholt, H. Shinya, J. Waye, C. B. Williamsが紹介されている.スコープそのものに関しては,本書のタイトルが示すように,肛門鏡に始まり,直腸鏡,ファイバースコープ,電子スコープが説明され,電子スコープについては日本の3社の画像の差が示されている.また使い捨てのS状結腸スコープについても触れられている.鉗子やスネアなどの周辺機器に関しては,外科医らしくゴム製の拡張具や拡張用のバルーンにまで言及しているが,やや偏りがあって少し物足りなさが感じられる.凝固に関しても,ヒータープローブのみが取り上げられ,マイクロ波もレーザーも,高周波電流発生装置すら登場しない.恐らく著者の日常活動をそのまま反映したものであろう.スコープの消毒については,ブラシと手洗いの後,2%グルタールアルデハイド10分浸潰でHIVもHBVも不活化できると述べている.ただ絶えず消毒効果が維持されているか点検することが必要であると強調されているが,具体的な方針については示されていない.また術者などが感染を免れるために前述の2ウイルスへの注意を喚起し,使い捨ての手袋やエプロンだけでなく,皮膚の露出を避け,眼鏡,靴カバーなどの着用を勧めている.ただHCVについては全く言及されていない.また内視鏡がもたらす菌血症について,人工弁や心内膜炎の既往歴がある場合は抗生物質の予防的投与を学会の勧告として紹介している.
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