特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
悪性サイクル(malignant cycle)
磨伊 正義
1
1金沢大学がん研附属病院外科
pp.326
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103998
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慢性胃潰瘍の癌化については古くから議論があり,Hauser(1926)の潰瘍癌化説は有名である.しかし,1960年代から胃診断学,特に内視鏡診断学が進歩し,この潰瘍癌化説は衰退しはじめた.すなわち,癌の悪性サイクル理論が導人され,癌自身は二次的に潰瘍化しやすく,更にその潰瘍性変化が縮小しうることが判明した.臨床的に悪性サイクルとは,陥凹型早期胃癌の癌巣内にみられる潰瘍が,漸次縮小して瘢痕となり,再び潰瘍が発生する現象を指している.このmalignant cycleは早期胃癌に多くみられるが,進行胃癌でも陥凹型早期胃癌類似進行癌症例にみられる.Fig. 1はその1例で,初回の内視鏡所見では胃角小彎の深い穿通性潰瘍で胃生検でGroupⅤが証明されたが,患者が手術拒否したため,保存的治療で経過をみた。Fig. 2は4か月後の内視鏡像であるが,胃角部の悪性潰瘍は著明に縮小し,Ⅱc型早期胃癌の像を呈している.
また,1966年,村上は潰瘍癌においても良性潰瘍と同様に治癒再発を繰り返すであろうことを指摘し,地層型(潰瘍瘢痕部の再生粘膜表層およびその周辺の粘膜に癌の拡っているもの)→Hauser型(開放性潰瘍の辺縁に癌を認めるもの)→聖域型(潰瘍底が主として非癌性再生粘膜で覆われ癌は,その辺縁に認められるもの)→Hauser型→聖域型なる回路を繰り返すと考え,これを悪性サイクルと呼んだ(治療 42: 261,1960).
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