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EMR後の長期経過
早期胃癌の内視鏡的治療の歴史を振り返ってみると,高周波の導入によるポリペクトミーに始まる.この高周波を用いる治療法は過形成性ポリープの切除に頻用されたが,有茎性あるいは亜有茎性の病変の一部を除いて,早期胃癌の治療の主流とはならなかった.その後,薬物局注法やレーザーを中心とする組織破壊法が行われてきたが,組織学的検討ができず,治療の成否が十分に評価できない欠点があった.今日の内視鏡治療の隆盛を招いたのは,多田らのstrip biopsyの開発であり,広基性隆起性病変のみでなく,平坦型,陥凹型早期胃癌も内視鏡切除の適応となった.その後,手技ならびに機器の進歩とともに,高張Na-epinephrine液局注併用法(endoscopic resection with local injection of hypertonic saline-epinephrine solution;ERHSE),ダブルスネア法(endoscopic double snare polypectomy;EDSP),フード法,ligating diviceを利用する方法(endoscopic mucosal resection with ligating device;EMR-L法),4点固定法,内視鏡的吸引粘膜切除法(endoscopic aspiration mucosectomy;EAM法)など多くの方法が考案され,EMRは爆発的に広まっていった.
EMRの適応については種々議論されてきたが,大体のコンセンサスが得られている.未分化型腺癌をどう扱うか,分割切除の意義などEMRを行ううえでの問題点は学会や医学雑誌でしばしば取り上げられてきたが,これらの適応や手技上の問題を除くと今日,本療法の評価で重要なのは長期経過である.多田らがstrip biopsyを発表して約15年が過ぎ,EMR後の長期経過を検討できる施設も増加している.日本消化器内視鏡学会においても,再発を見据えた治療法について議論されるようになっており,「消化管癌に対する内視鏡治療の長期予後」(第52回),「早期胃癌EMR後の遺残再発をめぐって」(第53回),「内視鏡的治療における根治とはなにか」(第54回)と相次いでパネルディスカッションが組まれてきた.この時期に「胃癌EMR後の遺残再発」の主題を組むことは意義あることで,本誌特有の詳細な論文が集まることを祈念する.
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