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編集後記
樋渡 信夫
pp.1334
発行日 1999年9月25日
Published Date 1999/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102834
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本号では,Crohn病の長期予後について,欧米にみられるような手術率や死亡率,QOLで評価するのではなく,形態学的変化やその推移に基づいて長期予後を予測できないかという観点から企画された.
腸管合併症を来しやすい病変として,大腸敷石像(前川),小腸敷石像(大井)が挙げられ,胃・十二指腸病変では隆起性病変の高度なものが狭窄に進行しやすく(畠山),直腸・肛門病変では,primary lesionの存在や痔瘻多発例が難治傾向にあることが示された(杉田).また,続発性アミロイドーシスがCrohn病の予後を規定する重要な全身合併症であることが報告された(山本).現代はEBM(evidence-based medicine)の時代であり,一般的にはより科学的な手法を用いた成績や討論が要求される.そこで多くの報告はできるだけ画像をスコア化して,客観化した成績で報告されたが,現実には,患者側も社会的背景が変動するばかりではなく,肉体的な状態も大きく変動する時期である.10年以上先を予測することは群としてはある程度可能になっても,個々の症例をみていると,アフタのみで診断がついても以後どんどん進展していく症例もあれば(松本,前川),広範な敷石像があっても,一度の栄養療法以後は緩解を維持している症例もあり(蔵原),日常臨床では科学的根拠よりも,経験的な判断を要求されるのも事実であろう.
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