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1995年にCrohn病診断基準が大改訂された.数年が経過し,今回はその問題点を取り上げ,将来のより良い診断基準作成の一助とすることを目標に企画された.
日常臨床ではおおむね順調に運用されているようだが,その中で問題点として挙げられたのが,①肛門部病変の取り扱い,②補助診断法の有用性の評価,③“indeterminate colitis”の定義と取り扱い,である.岩垂論文で,Crohn病に特徴的な肛門部病変の提示と通常病変との鑑別点が挙げられている.臨床の立場の論文でも,肛門部病変を診断基準の項目に復活させるべきとの意見が述べられた.問題は,これら肛門部病変を見慣れていない内科医が,十分に鑑別できるかどうかだろう.少し時間が必要である.補助診断法としては,CD68の免疫組織染色によるマクロファージの微小集簇巣の有無や,胃の“竹の節様所見”が挙げられる.これらの所見の感度,特異度を評価しながら,診断基準としてどう取り入れ,他の所見と組み合わせていくかは,更に検討が必要である.“indeterminate colitis”に関しては,従来は主に重症の手術例で検討されてきたが,最近は非切除の経過観察例も増えてきた.共通の概念,定義はまだ確立されていない.一般的には潰瘍性大腸炎とCrohn病のそれぞれの診断基準をいずれも満たす症例とされているが,施設の診断レベルや主治医の考え方にも左右される.また,"潰瘍性大腸炎とCrohn病の合併例"とする表現の是非も検討されなければならない.今回はあまり問題とされなかったが,“敷石像”のバリエーションはどの程度の広がりがあり,どこまでが臨床的に確診としうる“敷石像”なのかについても,今後の重要な検討課題と考える.
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