胃と腸 34巻10号 (1999年9月)

今月の主題 Crohn病の長期経過―10年以上の症例を中心に

序説

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“病気が治らない”とされているCrohn病(Crohn's disease;CD)の診療途上で医師は患者の治療法や予後の予測について悩み,患者や家族への説明のためにも長期の予後を知りたいと思うであろう.すなわち,人生で最も充実した青春期に発病した患者に対して,在宅経腸栄養などの治療で食欲や社会活動を本当に制限しなければならないのか,経口食はどの程度どんな食物が許されるのか,長い人生でみた場合に“再燃を抑えるとされている”治療が本当に有効なのか,治療を行わないとより急速に悪くなるのかなどを知りたいであろう.

 これらの疑問に直接答えられる科学論文はなく,対象も明らかでない経験談に頼るほかはない.経験の多い欧米でも事情は同じで,科学風に論じるために生命予後,手術率,QOLについての成績を基に論理を組み立てているにすぎない.しかし,それかと言って他に適当な方法はないので,われわれの成績を呈示し,欧米の成績と比較しながらCDの長期予後について考えてみたい.

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要旨 初診時非切除のCrohn病74例のX線所見を経時的に分析し,予後予測,特に合併症出現予測について検討した.X線所見の重症度を,敷石像,縦走潰瘍,その他の潰瘍を3段階,アフタを2段階に分類し,さらにそれらの病変の罹患範囲を求め,両者を掛け合わせて活動度とした.①初診時アフタのみから成る症例の半数以上が典型例へと進展した.初診時のアフタの部位や密度から進展するかどうかを予測することは困難であった.②瘻孔や狭窄が形成される部位には初診時に何らかの所見を認め,これらの合併症を確認する直前の検査では多くは敷石像を呈していた.③合併症の出現は,大腸敷石像で活動度が高い病変や,盲腸・上行結腸で起こりやすかった.また,大腸敷石像と小腸縦走潰瘍において,重症度3点で合併症を来しやすい傾向を認めた.④初診時の大腸敷石像は,3年以内の再燃時に不変・改善を示せば,合併症を来す確率は有意に低くなった.

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要旨 Crohn病(Crohn's disease; CD)患者の長期経過を,手術率,病変の推移の面から検討した.当院消化器内科で十分経過を追えた症例83例を対象とした.その中で死亡症例が4例,アミロイドーシス合併症例が5例みられた.手術症例は46例で累積手術率は5年目30.3%,10年目45.5%,15年目73.7%だった.再手術例は14例で累積再手術率は3年目12.5%,5年目43.5%,10年目69.2%だった.手術後1年以内に,口側に敷石像や縦走潰瘍を48%に認め,その中で73%が再手術となった.腸管吻合を側々吻合で施行された症例には吻合部狭窄を来した例はなかった.10年以上経過観察し,定期的に画像検査を行った31例を対象にして,病変の推移をみた.発症初期に敷石像を認めた症例は,小腸で17例55%,大腸に12例39%で,10年目までにそれぞれ8例47%,6例50%が手術された.縦走潰瘍を認めた例は小腸,大腸とも7例23%で,その中でそれぞれ1例手術となった.

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要旨 Crohn病の胃,十二指腸病変の内視鏡像を潰瘍性病変,隆起性病変のそれぞれにスコア化して検討した.初回検査のスコアは病型,活動指数,および炎症所見と相関はなく,胃,十二指腸病変は腸病変の緩解増悪とは無関係にみられた.Crohn病286例の経過中6例に幽門狭窄を合併した.累積幽門狭窄合併率は,発症後10年で2.7%,診断後10年で3.1%で,狭窄は比較的急速に敷石像へと進展し発現した.幽門狭窄6例と上部消化管内視鏡検査の観察期間が10年以上の非狭窄28例の初回内視鏡像の比較では,狭窄例の隆起スコアが有意に高値であった.すなわち隆起性病変の高度なものが幽門狭窄へ進展しやすいことが示唆された.非狭窄例の初回内視鏡検査の潰瘍スコアは最終検査より高値であった.びらんや潰瘍などの病変は進行性ではなく,またCrohn病の病態に関与した病変と,通常の潰瘍,びらんと同じ機序のものが混在していることが推測された.

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要旨 Crohn病に合併した直腸肛門病変にはCrohn病固有のprimary lesion(cavitating ulcer,anal fissure など)と,これが原因となって生ずるsecondary lesion(痔瘻,直腸,肛門腟瘻など),そのほかに直接Crohn病と関係のないincidental lesionがある.わが国では痔瘻の合併頻度が高く,これらの病変は長期経過中には外科治療を受けることが多い.incidental lesion としての痔瘻は通常の治療で長期予後は良好である.Crohn病に合併した直腸,肛門の primary lesion や secondary lesion は腸管病変と同じように経過中に再燃,再発を繰り返すことがある.難治性痔瘻例は primary lesion を持つ症例や多発性痔瘻症例であった.根治的治療法が確立されていない現在,難治例に対しては再燃,再発の可能性を考慮し,QOLを重視した低侵襲の外科的治療法を行うことが必要である.

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要旨 Crohn病(以下CD)に合併した続発性アミロイドーシス(以下AMY)11例(CD疑診1例を含む)について臨床的検討を行い以下の結論を得た.①AMYがCDに合併する頻度は1.8%であった.②CDでは尿蛋白出現前に消化管AMYが発症する.③消化管生検では十二指腸生検による検索がAMY陽性率100%で直腸生検より高率であった.したがってAMYの診断には腎生検や直腸生検よりも十二指腸生検を行うべきである.④AMY合併は大腸型で少ない.⑤CD長期経過例を対照群として比較し,AMY合併群は対照群の経過不良群と同様に初診時の炎症や活動指数が高いものに,また中部小腸に病変を有し縦走潰瘍スコアが高いものに多い.したがってCDの活動性がAMY合併の一因であることが示唆された.全経過中6例に腎障害が出現し,3例が死亡し予後不良であった.

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要旨 アフタ様病変のみで初回診断されたCrohn病のうち,臨床経過が10年以上追跡可能であった5例のX線・内視鏡所見を検討した.3例では,初回診断から39か月以内に回腸ないし大腸にCrohn病の典型像が確認されたが,他の2例ではアフタの出没をみるのみで経過した.典型像出現例のうち2例は短期間の栄養療法で改善し,栄養療法ないし無治療で緩解を維持しているが,1例では狭窄のため手術に至った.十二指腸病変の長期経過が追跡可能であった3例では,アフタ様病変の出没を繰り返していた.以上より,アフタ様病変のみから成るCrohn病の臨床経過は多彩であるが,短期間で小腸ないし大腸に典型像の出現をみるものと長期にわたってアフタ様病変にとどまるものに大別される可能性が示唆された.

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要旨 アフタ様潰瘍で発症し10年以上経過をみた3症例について注腸X線所見の推移を中心に報告した.〔症例1〕は16歳,男性.発熱を主訴に来院,初診時の注腸X線像では結腸全域にアフタ様潰瘍がみられた.このアフタ様潰瘍は1年5か月後の注腸X線像では消失していたが,2年後に再びアフタ様潰瘍で再発した。そして,3年5か月後には縦走潰瘍とcobblestone像のみられる進展例に移行した.5年後,15年後の注腸X線像では腸管は短縮し,狭細化・変形もみられ,また,粘膜は萎縮性となったが,依然として粘膜面にはアフタ様潰瘍の所見が認められた.〔症例2〕は52歳,女性.発熱,下痢で入院.初回の注腸X線像では全結腸に細かいアフタ様潰瘍を認めた.3か月後,このアフタ様潰瘍は消失したが,1年後の注腸X線像では再びアフタ様潰瘍が出現した.そして,2年1か月後には縦走潰瘍のみられる進展例となった.その後,栄養療法を確実に行ったところ自覚症状は消退し,10年8か月後,そして,15年後の注腸X線像でも潰瘍は瘢痕化し,粘膜面にもアフタ様潰瘍はみられず治癒像を示していた.〔症例3〕は51歳,女性.発熱,下痢で発症.初回の注腸X線像では結腸全域にアフタ様潰瘍が認められた.このアフタ様潰瘍は消長を繰り返し,10年後の注腸X線像でも萎縮性の粘膜面に認められた.また,初回の小腸X線像に認められたアフタ様潰瘍は4年6か月後の小腸X線像では短い縦走潰瘍に,9年後には典型的な縦走潰瘍とcobblestone像が認められるようになった.これらの症例の初回検査時にみられたアフタ様潰瘍は,いったん消失したが,その後また,アフタ様潰瘍として再発,次いで進展例に移行した.2例では長期経過後もアフタ様潰瘍は萎縮性の大腸粘膜に存在した.これらの観察から,アフタ様潰瘍はCrohn病の初期病変であると同時に基本的な所見であると考えられた.

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要旨 初回診断から10年以上にわたって,緩解を維持しているCrohn病の2例を呈示した.初回診断時,〔症例1〕は縦走潰瘍と狭窄を認める小腸大腸型,〔症例2〕は敷石像を主体とする小腸型Crohn病で,ともに中心静脈栄養で緩解導入後,半消化態栄養剤による栄養療法を経て11年および10年間無治療のまま緩解を維持している.呈示症例をさかのぼ及的に検討すると,初回診断時のX線所見のみから長期予後を予測することが必ずしも容易でないことが示唆された.

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要旨 在宅経腸栄養療法(HEN)が長期の緩解維持に有用であったCrohn病の2例を経験した.〔症例1〕は19歳,男性.1987年の小腸造影で回腸に縦走潰瘍と敷石像を認め,小腸Crohn病と診断.完全静脈栄養療法により緩解導入後は,外来で低残渣食を継続した.6か月後に再発したが,HEN導入後は,現在まで緩解を維持している.〔症例2〕は35歳,男性.1990年の大腸内視鏡で,大腸の広範囲に多発潰瘍を認め大腸Crohn病と診断.成分栄養剤による経腸栄養療法で,緩解導入後も外来でHENを継続しているが,現在まで緩解を維持している.経腸栄養療法はCrohn病の緩解導入のみならず,外来でのHENの継続は長期の臨床経過の改善にも有用と考えられ,自験例での成績を加え報告する.

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要旨 活動期Crohn病に対する成分栄養剤による経腸栄養療法は,ステロイド治療と同等の緩解導入効果があり,活動期Crohn病に対する primary therapy として広く用いられているが,その長期的な効果は明らかではない.今回われわれは,10年間在宅経腸栄養療法を施行しているCrohn病の2症例について,その病勢の推移を画像上で検討した.いずれも1,200kcal/日以上の在宅経腸栄養療法を施行していたが,再燃を繰り返した.成分栄養療法をCrohn病の緩解維持に応用した在宅経腸栄養療法は当施設の成績では,1年で40%と長期間の緩解維持効果を十分に有するとは言い難く,長期経過を考えると,コンプライアンスなどを含めて問題が多く,今後の検討が必要である.

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要旨 患者は29歳の女性.1985年(14歳時)に下痢が出現.1986年に発熱,関節炎が出現し,大腸型のCrohn病と診断された.その後,steroid,salazosulfapyridineなどで治療されていたが,入退院を繰り返した.1993年5月には上行結腸の狭窄のため結腸唖全摘術を施行した.その後,salazosulfapyridineで治療されていたが,1997年2月には発熱,貧血,低蛋白血症で入院.腸管狭窄(回腸S状結腸吻合部およびその口側の回腸)のため回腸,S状結腸の部分切除術を施行した.1998年8月には貧血,低蛋白血症で入院.大量の蛋白尿を認め,ネフローゼ症候群を呈していた.腎生検の結果,アミロイド(AA型)の沈着を認めた.

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要旨 患者は39歳の女性で,19歳のときに小腸大腸型Crohn病を発症した.37歳時の回盲部および回腸切除術後は在宅中心静脈栄養療法を行っていたが,嘔吐,腹痛,発熱が持続するため再入院した.ステロイド療法で症状が改善したため投与量を漸減中に右股関節痛が出現したが,単純X線,MRIでは異常を認めずCrohn病に合併する関節炎と診断した.NSAID(nonsteroid anti-inflammatory drug)が無効なため,ステロイドを増量したところ改善がみられた.再度ステロイドを漸減中に今度は左股関節痛が出現し,転倒を契機に痛みが増強し歩行不能となった.単純X線およびMRIで大腿骨頭の変形と広範な壊死を認めたため人工骨頭置換術を施行した.Crohn病における関節炎と大腿骨頭壊死について文献的考察を加え報告した.

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要旨 患者は36歳,女性.20歳時より,腹痛,下痢が出現.24歳時より下腿伸側に有痛性紅斑の出没を繰り返していた.32歳時,左下腿伸側の膿庖を混じる紅斑が急速に潰瘍を形成したため当院皮膚科を受診,壊疽性膿皮症と診断された.この時点の消化管X線・内視鏡検査で大腸型Crohn病と確診された.36歳時に両下腿に壊疽性膿皮症が再発し,その後S状結腸穿孔,大腸小腸瘻,大腸子宮瘻,更に小腸皮膚瘻のため計3回の手術を受け,現在小腸大腸型Crohn病として経過観察されている.壊疽性膿皮症を合併するCrohn病は症例数が少なく,腸管病変と皮膚病変の長期経過は不明であるが,自験例では大腸病変の重症度と皮膚病変の活動性が相関していた.

Coffee Break

内視鏡奮戦記(3) 武藤 徹一郎
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 3.盲腸までの到達レース

 大腸内視鏡検査を始めてから数か月後にはオリンパスから長い内視鏡の供与を受け,検査の範囲が一挙に拡がった.Dr.Christopher Williamsは初めは助手をしていたが,10例目くらいから俺にもやらせてくれということで,“10 minutes rule”のもとに2人で交互に検査を行った.日本での練習分も含めれば10数例は私のほうが経験が多いので,私が教師役ではあったがその技術は素人並み.そこで世界の第一人者をつかまえて,他人には“I used to be his teacher.”と言うことにしている.大体,直腸S状部を越えるのが一仕事,下行結腸へ入れる技術など全く知らないので,全然進まなくなることがしばしば起こる。10分経っても進まなければ交替する.これが“10 minutes rule”で,これは意外に有効であった.

 Dr.Williamsは器用な男で,病棟の処置用品をのせるトロリーに光源,吸引器,生検鉗子,その他の必要な品々をうまく配置して並べ,移動を自由にした内視鏡検査用トロリーを作成した.

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〔患者〕44歳,女性.主訴:特記すべきことなし.現病歴:1993年11月胃集検を受診し,胃角部前壁の粘膜異常を指摘され,当センターを受診した.

「胃と腸」ノート

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1.はじめに

 大腸内視鏡の挿入に際して,スコープの挿入状態(ループ)を知ることは,苦痛なく,安全,正確に検査を遂行するために重要である.また病変を発見した場合,その正確な部位を明らかにしなければならない.そこで大腸内視鏡検査においてもX線透視が必要であるが,X線透視は人体や内視鏡器具にも有害であるし,内視鏡室にX線装置を設営するための費用は莫大である.

 そこでX線を使用しなくても,スコープの挿入状態を知るための手段の開発が望まれているが,筆者も含めて,欧米の医学雑誌でこれらのアイディアを読んだ内視鏡医は,わが国でも早く実用的な装置が開発されないものか,やきもきしながら期待している.最近,オリンパス光学(株)でも独自の方式の挿入形状観測装置が検討されてきたが,実用化のめども立ってきたのでその概略を紹介する.

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欧文目次

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 認定内科医・認定内科専門医の資格を得るには一定の施設での研修を終了後に認定試験に合格しなくてはならない.これらの試験に向けての手引きとも言える問題集には既に改訂2版を経た第1集があるが,これに続く第2集がこのたび内科学会認定内科専門医会の編集で出版された.総合問題,消化器,循環器など10分野からの423問の問題とその解説から成っている.患者を実際に診ている内科専門医会のメンバーが出題している実践的な問題集であり,かつ多肢選択の解答形式や禁忌肢の導入など実際の認定内科医・認定内科専門医試験に準拠した内容である.

 試験のためのと銘打ってあるが,生涯教育のテキストとしても使える1冊である.資格を既に得た先生のブラッシュアップや,他分野の先生には認定内科医試験の状況を垣間見るのによいかもしれないのではとも思う.米国内科学会(ACP)では Medical Knowledge Self-Assessment Program(MKSAP)という生涯教育のプログラムがあり,数年ごとに改訂され現在は MKSAP11 となっている.本書はレベルのうえではこれに並ぶものであると言えよう.現在では,認定内科医は毎年1,700人程度誕生し,認定内科専門医は500人程度認定を受けている.内科専門医会会員も総計5,000人以上となり,自前でこのような問題集を次々と出版できる状態となり,同慶の至りである.

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 この度日本食道疾患研究会(編)として出版された「食道疾患レアケース・アトラス」は第52回日本食道疾患研究会を主宰した神奈川県立がんセンター院長・小泉博義先生が主題の1つに選んだ「見て良かった稀な食道疾患」全国応募118題の中より特に興味深い症例58例を厳選し,アトラスとして出版したものである.本書をひもといてみると,とかくわが国におけるこの種の著書は,症例の偏りもありやむを得ない点もあるが,癌が中心となる傾向が強い中で,極めて特異的な特徴を示し,半世紀近く食道疾患の治療に従事して来た私にとっても,初めて目にしえた珍しくかつ貴重な症例が集積されており,永年探し求めて来た宝物に出会ったごとき興奮を覚える.まさに幕末の学者が蘭学の書を手にした状況と言っても過言でない.

 本書の内容を簡単にかいつまんで紹介すると,大項目が良性疾患と悪性腫瘍に大別され,良性疾患では先天性疾患から始まり良性腫瘍,ポリープ,特異性炎症疾患など7項目に細分され,しかもそれぞれの疾患の症例がまさに今まで目にしたことのないまれな貴重な症例の集積である.悪性腫瘍の項も,癌腫,肉腫,黒色腫など7項目に細分され良性疾患同様,それぞれの項の中に今まで経験したことのない貴重な症例が集められている.しかも症例が厳選されているため,すべての症例において写真,組織像などのアトラスが極めて鮮明に描写されており,本書の価値を更に高めている。またそれぞれの症例の解説も明解に記され,単なる症例の紹介だけでなく治療,予後,更にはそれに関連する文献まで網羅し,日常の臨床にも直ちに応用できるよう,きめ細かい配慮がなされている.まさに目で見る食道疾患の実用的図鑑である.

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 市川平三郎先生(早期胃癌検診協会理事長,国立がんセンター名誉院長,日本対ガン協会常務理事)が1999年度のRöntgen-Plakette(レントゲン賞)を受賞された.まずもって,その快挙を御祝いするとともに,筆者としては,市川先生がこの賞を受けられたことに,わずかながら御役に立てたことを誇りに思いたい.

 この賞は,言うまでもなく,X線を発見し,第1回ノーベル物理学賞を受けたWilhem Conrad Röntgen(1845-1923)の偉業を讃えて,その生地レムシャド市が1951年に創設した権威ある賞である.WC Röntgenはレネップ(Lennep)市に生まれたが,現在,レネップ市は合併されてレムシャド市の一部となっている.地図を見ると,このレムシャド市はデュッセルドルフから東に30kmくらいのところに位置し,いわゆる“Bergishcen Land”(Berg Country)と呼ばれる風光明媚な地方の一小都市である.

編集後記 樋渡 信夫
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 本号では,Crohn病の長期予後について,欧米にみられるような手術率や死亡率,QOLで評価するのではなく,形態学的変化やその推移に基づいて長期予後を予測できないかという観点から企画された.

 腸管合併症を来しやすい病変として,大腸敷石像(前川),小腸敷石像(大井)が挙げられ,胃・十二指腸病変では隆起性病変の高度なものが狭窄に進行しやすく(畠山),直腸・肛門病変では,primary lesionの存在や痔瘻多発例が難治傾向にあることが示された(杉田).また,続発性アミロイドーシスがCrohn病の予後を規定する重要な全身合併症であることが報告された(山本).現代はEBM(evidence-based medicine)の時代であり,一般的にはより科学的な手法を用いた成績や討論が要求される.そこで多くの報告はできるだけ画像をスコア化して,客観化した成績で報告されたが,現実には,患者側も社会的背景が変動するばかりではなく,肉体的な状態も大きく変動する時期である.10年以上先を予測することは群としてはある程度可能になっても,個々の症例をみていると,アフタのみで診断がついても以後どんどん進展していく症例もあれば(松本,前川),広範な敷石像があっても,一度の栄養療法以後は緩解を維持している症例もあり(蔵原),日常臨床では科学的根拠よりも,経験的な判断を要求されるのも事実であろう.

基本情報

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胃と腸
34巻10号 (1999年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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