WIDE SCOPE
CT導入時のエピソード
田坂 晧
1
1東京大学
pp.145
発行日 2001年10月30日
Published Date 2001/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908379
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前世紀末期のCTおよびMRIの導入は,放射線診断の精度を著しく改善させた.わが国では,1976年に自動車賠償責任保険の益金を使って,全国の国公私立大学病院に一斉にCTが設置された.多分このことが,診療能力の全般的な向上,その後の装置の改良や普及などに,大変良い影響を与えたといえるだろう.
自賠責保険の益金を交通事故対策などへ活用する目的で,担当の大蔵省銀行局保険部長と保険第二課長が,原案の作成に当たった文部省医学教育課の課長補佐と一緒に,1975年6月26日に東京大学医学部付属病院に意見を求めに訪れた.対応をしたのは,脳神経外科教授と放射線科教授の私とである.見せられたのは,1ヵ月前に文部省でまとめた,「脳神経外科医養成等に係る自賠責運用資金要求(案)」という数枚の書類である.設備助成と研究者の海外派遣などの内容である.約40億円の資金で,設備では医療機器の購入助成を考えていた.装置の目玉は,英国で開発されたEMIスキャナーで,全国を7ブロックに分け,交通事故の状況などを勘案し助成対象の大学を決める.3年計画で初年度は4台を予定していた.
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