“ホッ”とspot
患者のことばを鵜呑みにしないように
林 勝吉
1
1医仁会武田総合病院消化器科
pp.239
発行日 1995年11月30日
Published Date 1995/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904062
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68歳の男性が,腹痛を主訴に来院した.腹痛の部位は初め不定であったが,数日後には左側腹部に限局したとのことである.初診時,理学的所見では腹部に圧痛部位はなく,特に異常はみられなかった.腹部X線,検尿に異常なく,血液検査では白血球数の軽度増加以外異常はみられなかった.抗コリン剤が腹痛時の頓服薬として処方された.
しかし,患者は抗コリン剤では腹痛が軽快しなかったため3日後の深夜来院し,「腹の痛いところに湿布を貼ったら皮膚がかぶれた」といっていた.その際,鎮痛薬が処方されたが,それによる腹痛の軽減は一時的であり,その翌日,私の外来を受診した.腹部を診察しようと患者に衣服を脱いでもらうと,左の側腹部から腰部にかけて,一部水疱を伴う帯状の発疹が認められた.患者が訴えていた「湿布を貼ったら皮膚がかぶれた」は誤りで,herpes zosterによる発疹であった.
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