今月の主題 STROKE—脳卒中診療のポイント
脳卒中:病型別の臨床
TIAの診断と治療
小林 祥泰
1
1島根医科大学・第3内科
pp.2434-2435
発行日 1990年12月10日
Published Date 1990/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900628
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●TIAの診断
TIA(一過性脳虚血発作)とは短時間の脳虚血により神経症状が一過性に生じるもので,その診断基準は表に示したごとくである.一般にTIAの発作そのものを観察する機会は少なく診断には問診が重要となる.かつてはTIAは脳梗塞を伴わないものと考えられていたが,CT,MRIなどの画像診断の進歩により,CT上は梗塞に陥っている例も稀でないことが明らかにされた.これは我が国で比較的多いとされる穿通枝領域のlacunar infarctionによるTIAに多い.しかし,Murrors et al1)は284例のTIAで34例にCT上脳梗塞を認め,頸動脈狭窄と有意の関係を認めたとしている.TIAの発症機序としては頭蓋外主幹動脈のアテローム潰瘍に形成された血小板血栓による脳動脈への塞栓(通常数分間)が最も多いが,穿通枝動脈血栓によるものもある.TIAの脳梗塞発症率は3.5〜62%と報告者によるばらつきが大きい.TIAの症状は脳梗塞などと同様であり,あらゆる局所神経症状を呈しうるが,内頸動脈系に特徴的なものとして一過性黒内障がある.これは眼動脈塞栓による一側の失明発作で数分以内に消失することが多いが,筆者は種々の治療にもかかわらず塞栓子が完全に融解せず視野の一部欠損を残してしまった例を経験したことがある.回転性めまいや意識障害発作のみの場合は,稀に椎骨動脈系の高度狭窄によるものもあるが,一般には他の原因を考えるべきである.
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