増刊号 内科エマージェンシーと救急手技
疾患からみた内科エマージェンシー
腎疾患・電解質異常
85.脱水症
和田 孝雄
1
1稲城市立病院
pp.1962-1963
発行日 1990年9月30日
Published Date 1990/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900502
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●脱水症の症状と重症度
脱水症とは体液の喪失を意味する言葉である.したがって,脱水症の症例の多くは,水分だけでなく,電解質ことにNaの喪失を伴っている.水分とNaの喪失の比率は症例によってさまざまで,検査所見なしに判定することは困難である.またそれに加えて重症度も問題になってくるので,脱水症を単一のスケール上で論じるとなると,なかなか難しい問題がある.
表1に示すように,脱水症の症状には4つある.第1は細胞外液の浸透圧上昇によるもので,口渇,尿の濃縮が主であり,重症になれば精神症状を生じる.第2は細胞外液の減少によるもので,皮膚,粘膜の変化,眼圧低下などがある.第3は循環血漿量の減少によるもので,循環系の虚脱,BUNの上昇などが主である.第4は細胞内水中毒による症状で,頭痛,嘔吐,痙攣,意識障害,などを含む.このうち第2,第3はwater depletion,salt depletionの両者に存在しているが,第1はwater depletion,第4はsalt depletionに特徴的であるとされる.しかし実際には分類不可能なケースが多いので,まず両者を一緒にしてしまい,単に脱水症とのみ診断する.そうした上で上記の症状がはっきりと認められれば,中等症あるいはそれ以上,ショックや精神症状が出現すれば,重症の脱水症として扱う.
いずれにしても,とりあえず無難な輸液を行いながら,検査所見が得られるのを待つのである.
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