書評
—宮岡 等 編集代表 淀川 亮,田中 克俊,鎌田 直樹,三木 明子 編—職場のメンタルヘルスケア入門
井上 幸紀
1
1大阪公立大学大学院・神経精神医学
pp.2285
発行日 2023年12月10日
Published Date 2023/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229329
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精神障害による労災申請もその認定も増加の一途をたどっている昨今,メンタルヘルスケアは職場における最優先課題の1つである.職場のメンタルヘルスに関する成書も多く出版され,最近はスマホでネット記事にもアクセスできる.困ったら本で,ネットで,検索すればよいと思っておられる方も多いのではないか.しかし,それでは職場でいざというときに役立たない.職場で求められているのは,目の前で困っている労働者,上司,そして産業保健スタッフへの具体的対応だからである.またネットなどですぐに参考資料を引けるように思いがちだが,どのように調べたらよいのかわからず,目の前にある具体的な困りごとに役立つ記載にはなかなか辿り着かないだろう.本書の良いところは,単なる病気の説明にとどまらず,メンタルヘルス不調による職場での具体的な困りごとや,「事例性」に多く触れているところである.痒い所に手が届く内容で驚いたが,執筆者が「現場が本当に知りたい問題」を取り上げるべく,周囲の産業医,産業保健スタッフにあらかじめアンケートを実施したと知り,さもありなん,と納得した.
本書がQ&A形式であることも素晴らしい.いざ困ったときに目次からよく似た質問(Q)を見つけてそれへの具体的な対応(A)を読むことができる.職場での一次から三次予防のノウハウが惜しげもなく書かれており,入門書として最初から勉強するのもよいだろうし,困ったことが起こる度に本書をひも解くこともよいだろう.そうすれば知らないうちに実践に即した知識と対応方法が身につくことだろう.
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